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【2015ベストコレクション⑧】ファッションで「平和」を願うリトゥンアフターワーズ山縣良和

2016年01月01日 05:22  Fashionsnap.com

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writtenafterwards / written by 3月開催のショー Image by: Fashionsnap.com
日本を拠点に活動するブランドを対象に、2015年に発表された新作から、特に優れていたコレクションをセレクト。デザイナーの思いや服作りにフォーカスする企画【2015ベストコレクション】第8弾は「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」および「リトゥンバイ(written by)」を手掛ける山縣良和氏のクリエイションにフォーカスする。

【2015ベストコレクション】リトゥンアフターワーズ山縣良和の画像を拡大

 今年ファッションの都パリで起こったシャルリー・エブド襲撃事件や同時多発テロをはじめ、世界各地で混乱や困難が起こるたびに、あらゆる人々が平和を願って祈りを捧げている。「ファッションは時代を映す鏡」ならば、この混沌とした世の中でファッションデザイナーは何をするべきか。その答えを模索しストレートに表現しているのが山縣氏だ。
 3月に東京で開催したショーのテーマは「地球」で、ランウェイにはニードルパンチ製の大きな地球が転がり、子どもたちが「ヒール・ザ・ワールド」を歌った(その歌詞カードは観客にも配られた)。年齢や国籍が異なるモデルやカラフルなニットは、1980~90年代にオリビエーロ・トスカーニが撮影し社会問題を取り上げた「ベネトン」の広告に触発されたという。途中、宇宙人やスーパーマンが登場すると客席から笑いが起こり、最後に地球が戻っていく時には会場が声援と拍手で包まれた。9月のTGC(東京ガールズコレクション)では、パリで遭遇したという10万人規模のLGBTパレードや日本の安保法案反対デモなどを受けて、「THINK PEACE」といったカードを持った数十体の人形がパレードする様子が一体の衣装に表現された。そして10月の「リトゥン バイ」2016年春夏コレクションでは国旗そのものがニットのデザインになったほか、「LOVE」や「HOPE」などのフラッグが貼り付けられたデモTシャツも発表している。
 山縣氏が今の空気を吸って吐き出したクリエイションは、時代を象徴しながらも決してシリアスではない。そこにはいつもユーモアがあり、人と社会をつなぐコミュニケーションがある。日本人で初めてLVMHプライズにノミネートし、また「コレット」のウィンドウに作品が選ばれるなど特に海外で存在を広げた山縣氏のこれからにも注目だ。

【動画・画像】writtenafterwards 2015-16年秋冬コレクション【レポート】ファッションが伝えるピースフルなメッセージ【レポート】総額1千万円の巨大ドレスを水原希子が着用 デザイナー山縣良和が制作
【年末企画】2015ベストコレクション ①料理のように焼いたり蒸したり「イッセイ ミヤケ」が探求するレシピ ②テアトラが提案する「目的があるデザイン」 ③スポーツ×ファッションを象徴する「ナイキラボ×サカイ」の功績 ④アンダーカバーが25年目に見せた真骨頂 ⑤世界に挑む「マメ」の変化と進化 ⑥ミキオサカベのファッションの本質を問う取り組み ⑦飛躍する「ファセッタズム」の覚悟と戦い