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乃木坂46は悲しみからどう這い上がったか? 『紅白歌合戦』落選から出演決定までの1年間を振り返る

2015年12月31日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 2015年の大晦日、乃木坂46は目標としていた紅白歌合戦の舞台に立つ。披露する楽曲は37名全員での「君の名は希望」。乃木坂46にとって、これまでの一つの集大成となることは間違いない。


昨年の紅白落選から1年。彼女たちはその悲しみからどのようにして這い上がり、その席を勝ち取ったのだろうか。乃木坂46の2015年の歩みを振り返っていく。


 最近テレビを見ていると、嵐がしきりに「年賀状、ください」と言っているが、ちょうど去年の今頃乃木坂46も年賀状ハガキの上をぐるぐる回っていた。


 紅白出場は1年越しになってしまったものの、2015年の乃木坂46は紅白出場という一つの到達点に合わせて、これまでの歴史のまとめに入っていった。発売当時の全シングルとカップリング人気投票で選ばれた上位10曲に新曲を加えた『透明な色』はもちろん、4月に終了した冠番組「乃木坂って、どこ?」のDVD化、ドキュメンタリー映画『悲しみの忘れ方 Documentary of 乃木坂46』、その他にも週刊プレイボーイでの連載を書籍化した『乃木坂46物語』やデザイン・グラフィック誌MdNによるムック本『乃木坂46 映像の世界』などなど。紅白という区切りに合わせて、既存ファンにとってはこれまでのおさらい、そして新規ファンにとってはグループの歩みを知る大切な資料を揃えたのだった。


・魅せ方の幅を広げた2015年楽曲


 乃木坂46はとりわけ楽曲を評価する声が多いアイドルグループとしても知られているが、2015年の乃木坂楽曲を支えたのは、間違いなくAkira Sunset氏だった。彼は、今年リリースされた楽曲27曲中、約1/3にあたる6曲を手がけている。これで歴代の合計でも12曲を手がけ、「君の名は希望」「羽根の記憶」などを手がける杉山勝彦氏よりも多くなった。手がけた楽曲もアンダー曲「君は僕と会わないほうがよかったのかな」「別れ際、もっと好きになる」、からあげ姉妹による「無表情」、そして13thシングル表題曲「今、話したい誰かがいる」など多種多様だ。


 また、今年のうちに西野七瀬のソロ曲が3曲、星野みなみと齋藤飛鳥を軸にした曲も3曲生まれた。ユニットでも今年昇格した6名による「ボーダー」、「他の星から」メンバーによる「隙間」、13thアンダーメンバー5人で結成されたサンクエトワールによる「大人への近道」など見せ方の幅が一気に増加。それと同時に、全員で歌う「悲しみの忘れ方」という新たなグループのテーマソングが生まれたのも大きな収穫だった。


 次なる目標は明確で、紅白歌合戦の歌唱曲でもある「君の名は希望」に続くヒットソングを生み出すことだ。2016年はこの課題とともに、どのような楽曲群がリリースされるのか、楽しみでならない。


・各メディアを席巻した2015年


 今年大躍進を遂げた齋藤飛鳥が、女性ファッション誌『CUTiE』に初登場にて表紙を飾ったのが1月。そこから、彼女は同雑誌の専属モデルとなり、それに続いて『non-no』専属モデルに西野七瀬、『CanCam』専属モデルに橋本奈々未と松村沙友理、『Popteen』専属モデルに川後陽菜、『Zipper』専属モデルに北野日奈子が選ばれた。以前から『Ray』専属モデルとして活動する白石麻衣を合わせるとこの一年で、7名の専属モデルを擁するグループになっていた。ファッション雑誌だけでなく、グラビア雑誌、週刊誌、趣味・芸術雑誌などなど今年に入って乃木坂46を起用する紙媒体は大きく増えた。紙媒体では何と言っても乃木坂46の強みであるビジュアルを活かせることが大きな強みだ。2014年末に発売した白石麻衣の写真集以降、今年に入って西野七瀬、橋本奈々未の写真集も好評で、来年には生田絵梨花の写真集の発売もあり、『乃木坂派』以来となる、グループ写真集第2弾も、来年あたりが出しどきかもしれない。


 もう一人の躍進メンバーといえる衛藤美彩は、4月にbayfm『金つぶ』のパーソナリティーに選ばれた。彼女だけでなく、『GIRLS LOCKS!』3週目パーソナリティに橋本奈々未、NHKラジオ『らじらーSUNDAY』週替わりMCに中元日芽香、bayfm『OL兼任アイドル新内眞衣のまいちゅんカフェ』のMCに新内眞衣、永島聖羅に至っては2月から始まった『デリシャスミュージック』で、『沈黙の金曜日』に続く、2本目のラジオレギュラーを務めている。


・新たな挑戦が広げた演技の可能性


 今年はメンバーが演技を“好きになった”1年だったとも言える。初めてメンバー全員が出演したドラマであるテレビ東京『初森ベマーズ』、福神を除くメンバーによるオーディションで選ばれた舞台『じょしらく』、12thシングル3列目メンバーによる『すべての犬は天国へ行く』が春から秋にかけて行われた。これらに3作に立て続きに出演した松村沙友理が「演技の楽しさを知った」と語るなど、これまで『16人のプリンシパル』でしか知らなかった演技の世界を大きく広げることに成功した1年だったといえるだろう。『初森ベマーズ』は48グループの『マジすか学園』ほどのキラーコンテンツになれたとは言い難いが、“演技力”を特色のひとつにするグループにとって大きな経験だっただろうし、“アイドルにしかできない舞台”『じょしらく』と“アイドルであることが活かせない舞台”『すべての犬は天国へ行く』を経験できたことは大きな収穫だ。今年もグループを飛び出してドラマや映画、舞台で活躍するメンバーが見られたが、来年はよりモチベーションを高く持ち、様々なステージで活躍することになるだろう。


・ライブで示した「最新版乃木坂46」


 今年の乃木坂46の活躍はどの方面でも目覚ましいものだった。ではこれまでと何が違っていたのかといえば、紅白出場という目標に向けて一致団結したことが何より大きい。そして、常に進化を続ける「最新版乃木坂46」を見せてくれたのが、西武ドームにて行われた『3rd Year Birthday Live』と『真夏の全国ツアー2015』だった。前者では7時間半という異例のライブを極寒の西武ドームで成功させ、後者では広島を新たに加えた地方のアリーナツアーと、昨年悔し涙を流した神宮球場でのライブを2daysでやりきってみせた。両公演ともに、グループの並々ならぬ気迫とレベルアップしたパフォーマンスだったし、紅白出場発表後に行なわれた『Merry X'mas Show 2015』では、様々なアプローチで「魅せる」ライブを披露しファンを楽しませていたことも記憶に新しい。


 また、2014年にスタートし、グループ全体に大きな変革をもたらした『アンダーライブ』は、今年ついに武道館単独ライブという目標を達成した。平日の2daysで18:30開演と決して好条件とは言えないなか、アンダーメンバーのみでの武道館ライブを、2年を待たずして成功させることができたのは、メンバーの熱意とそれに応えるファンの力があってこそだ。そして、2016年には全国ツアーという新たな展開が待っている。どこを回りどの規模でツアーを行うのか、発表が待ち遠しい。


・紅白の向こう側の世界へ


 いよいよ紅白出場を迎えるわけだが、もちろん『紅白』の向こう側の世界はまだ不透明だ。14thシングルの発売は発表されたものの、『4th Year Birthday Live』の延期が発表され、舞台公演『16人のプリンシパル』がどうなるのかも定かではなく、2016年の動きはまだあまり見えてこない。2016年以降、彼女たちは何に向けて走り、何が彼女たちには必要で、何が彼女たちを成長させてくれるだろうか。その果てに、今年のような全体の団結は維持できるのか。


 ここまで順風満帆な歩みではあるものの、真の意味で国民的グループの座をつかみ取るには、テレビという大きなメディアを制することが不可欠だし、そのためには爆発的なセールスのほかに、各メンバーがグループを超えて世間への認知をされることが重要だ。そう考えると、『紅白』出場は到達点ではあるものの、また坂の途中に過ぎないし、これからが本当の戦いになる。2016年の乃木坂46は、どのように変革しながら、“紅白の向こう側”の景色を見せてくれるのか。ひとまずは期待して見守りたい。(ポップス)