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Hey! Say! JUMPの知られざる苦悩の日々ーー彼らの軌跡を追った書籍の著者インタビュー

2015年12月30日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

田幸和歌子著『Hey! Say! JUMP 9つのトビラが開くとき』(アールズ出版)

 ジャニーズ・ウォッチャー田幸和歌子氏が、Hey!Say!JUMPの軌跡を追った書籍『Hey! Say! JUMP 9つのトビラが開くとき』が12月14日、アールズ出版より上梓された。2007年に結成されたHey! Say! JUMPは、史上最多の人数と平均年齢15歳というフレッシュなメンバーで話題をさらったが、その若さやデビュー時の恵まれた環境から、「エリート」や「温室育ち」などと言われた時期もあった。知られざる困難や苦悩を乗り越え、大飛躍を遂げようとしている彼らの成長ヒストリーを描いた今作は、長年のファンは当時を思い出し、最近彼らに興味を持った方々には、入門書のようにお楽しみいただけるのではないだろうか。今回リアルサウンドでは、著者である田幸氏へインタビューを行い、改めてHey! Say! JUMPメンバーの魅力、そして今後に寄せる期待などを、熱く語ってもらった。(佐藤結衣)


(関連:Hey! Say! JUMPが見せる“シェアハウス”的な関係性 冠番組『いただきハイジャンプ』から魅力を紐解く


■“伊野尾革命”に大ブレイクの予感


――本作は、まさにHey!Say!JUMPを知る上でのバイブルという形ですね。


田幸和歌子(以下、田幸):ありがとうございます。もともとJUMPって、メンバーが若かったことから、デビュー当時のファンも女子小中学生がほとんどでした。なんとなく大人が入っちゃいけないところっていう感じがあったんですよ。なので、こうしたまとまった情報というのは意外と少なかったんじゃないでしょうか。


――長年のファンからしたら「そうそう」と振り返ることができますし、新しいファンには「こんなことがあったのか」と、より深く知ることができる一冊だと思います。


田幸:彼らはまだまだ若いですが、デビュー歴でいうと再来年で10年目。それぞれが今日まで抱えてきた苦悩や焦り、過去にあったメンバー間の確執など、かつては触れられなかったことが、少しずつ語られるようになってきましたよね。「JUMPもそういう年齢になったのか」という印象です。


――しかし、いきなり“伊野尾革命”という項目から始まっていたのには、驚きました。


田幸:そこは旬の話題なので(笑)。当初は、時系列で、デビュー当時からの流れを追っていく形式でまとめていこうという案もあったんですが、今JUMPに波が来ていることを示すには、まずここから語らなければと思いまして。


――伊野尾慧さんが『24時間テレビ』などで、嵐やV6といった先輩ジャニーズとからんだことで、一気に注目を集めたんですよね。


田幸:はい、もうJUMPファンからしたら、大事件でしたよ。伊野尾さんは、学業優先だったこともあり、9人いるメンバーの中でも、これまで露出も少なめでどちらかというと目立たないポジションにいました。でも、ファンはそこを愛していたんです。わずかな出番の中から、自分だけが発見する喜びがあるというか。それが、ドンと前に出たので、「キテる、キテるぞ」と。まさしく“革命”だと沸いたわけです。


――明らかに風向きが変わってきていると?


田幸:私個人の肌感覚ですが、未だかつてないほどコンサートチケットが取りにくくなりましたし、CDも完売していて買えないという声もあちこちで聞きます。ライブDVD『Hey! Say! JUMP LIVE TOUR2015 JUMPing CARnival』は発売が発表された当日にあちこちのネットで予約終了になっていましたし。


――これも伊野尾革命のおかげ?


田幸:そうですね。JUMPはデビュー当時の子どものイメージが強いのと、ジャニーズど真ん中のキラキラ感が先行していたんですよね。この2~3年は「ジャニーズらしからぬ」という謳い文句のもと、他のグループが多く取り沙汰されていて、「もうJUMPのようなアイドルの王道グループは時代的に合わないんじゃないか」とさえ言われていました。その中で、伊野尾さんのキャラクターは、これまでJUMPになかった魅力だったので、見事にみんなが食いついたんだと思います。伊野尾さんの好感度が上がっていくのと同時に、グループの知名度がグンと上がって勢いづいたのは、ちょっと意外でしたね。こういう形で、グループって売れていくんだなって。


――ファンにとっても、予想外の展開だったわけですか。


田幸:そうだと思います。ジャニーズファンは愛情を持って、メンバーのスキル面をよく分析しているんです。「歌がうまいのは○○」「演技なら○○」というように。その中で、しのぎを削って、誰が上にいくかって見ているんですよね。でも、伊野尾さんがバラエティで注目されたのって、いわゆる「トークが上手」とか「MC力がある」というところとはまた違った形でしたね。


――スキルというよりもキャラクターとして愛される存在になったということですね。


田幸:はい。そして、それが一番強いことだと思いました。JUMPファンの間では今年の夏前くらいまで「どうしたらJUMPってもっと売れるのか?」という会議がネット上などの
あちこちでなされていたんですよ。その結論が出ないまま、予想外のところから火がついたという印象です。


■波が来ては溜め息に変わっていた、あの頃


――ファンが会議を?


田幸:もっと売れてほしい、もっと人気が出てほしい。そう願うファンたちは、妄想プロデュースをする人が多いですね。私もその一人ですが、まさかこんな形で勢いにのるとはビックリしました。


――それほどファンの中に危機感があったということですか。


田幸:そうですね。彼らの歴史って、「波が来てるんじゃないか」と思った次の瞬間に、いつも何かしらの事件があるんですよ。NYCとのメンバー兼任では、みんないい子で誰も悪くないのに、ファンが複雑な気持ちになってしまう展開になってしまいました。また、最年少メンバーのスキャンダルも、その背景を考えるとすごく可哀想でしたね。


――JUMPには“苦労をせずにデビューした勝ち組グループ”という印象もありましたが。


田幸:華々しくデビューした当時はそうだったかもしれません。でも、一方で「エリート」「温室育ち」「お気に入り」と言われ、同じジャニーズファンからも叩かれたくらい。どこにいってもアウェイな状況が続いていました。それに対して、彼らはただただ受け入れていて、その悔しさを努力に注いで、本当に美しいグループなんです。


――とても忍耐強い?


田幸:はい。ジャニーズでは、Jr.時代に結成されたグループのままデビューするほうが、圧倒的に少ないんですが、それでもここまでキャリアの違うメンバーを寄せ集めて作られたグループは珍しいです。さらに人数が多いということで、かなりギクシャクはしていたはず。5人くらいの人数であれば、1人くらいキラ星のごとくローキャリアのメンバーが入っても収束しやすいんですが、JUMPはその倍はいましたから。しかも幼かったため、話し合いなどもなかなかできなかったことでしょう。本当に大変だったと思います。デビューしたばかりのころのメイキングを見ると、電車の座り具合でまだ心を許してない感じや、コミュニケーションがまだぎこちない感じなのも、見て取れるほどです。


――センター交替というセンシティブな出来事も、取り上げられていますね。


田幸:今でこそ、山田涼介さんと中島裕翔さんが雑誌などの対談で、当時の思いを語り合えるようにはなりましたが、それもごく最近のこと。数年間は話題にするのも気が引ける展開でした。そういう意味では、中島さんはそこをよく踏ん張ってくれたなと思います。他のグループでも、あるメンバーが急に人気が上昇しても、センターを交替してきたかというと、そうではないですから。そんな前例のほとんどない中で腐ってしまったり、脱退してしまったりせずに頑張ってくれたのが、本当によかったです。薮宏太さん、八乙女光さんが精神的支柱になってくれていたんじゃないかなと思います。


――一方で、山田さん自身も悩み多き日々を送られていたようですね。


田幸:山田さんの人気が独り歩きしてしまい、山田さんとその仲間たちというポジションがしばらく続いていました。なので、ソロデビューもメンバーたちは背中を押してくれていましたが、ファン心理としては複雑なところもあって。本当はみんなで「おめでとう」って言えたらよかったのですが、当時のJUMPの状況からしたら、心の底から言えないもどかしさがあったんです。舞台『ジャニーズ・ワールド』のプレッシャーもすごくのしかかっていて、そういうときにこそ山田さんは光り輝く人ではあるんですけれど、壊れてしまうんじゃないかって、見ていて辛かったですね。


――そんな山田さんのパートナーとして知念侑李さんにも注目していますね。


田幸:知念さんのプロ意識というか、努力は山田さんをはじめ、いつもグループにいい影響を与えていたと思いますね。彼は、雑誌やラジオなど、表に出すものを徹底的にクオリティーコントロールしているように見えます。大人度が非常に高いんですよね。デビュー当時、いちばん天使のような美少年だったのに、見事に大人の男性へと成長を遂げたのは、本当に見事です。あんなにかわいらしかったのに、今ではいちばん男らしいんじゃないかと思うくらいです。


――有岡大貴さんの知られざる戦いを追った章は、愛情を感じました。


田幸:有岡さんに関しては、「永遠の少年」「常に元気」と表現されることが多く、すごく性格が良さそうだなと見ていました。でも、正直なところ深みを感じることが少なかったんです。ただ今回、軌跡を追っていく中で、グループのためにどれだけ彼が、水面下で人と人とをつなぎ、一生懸命戦っていたのかを知り、グッとくるものがありました。振り返ってみると、JUMPの危機を支えていたのは、有岡さんだったんだというのがわかると思います。


■“伊野尾革命”に続く革命は?


――伊野尾さんに続く、次に見つけられちゃうメンバーは、どなただと思いますか?


田幸:いよいよ高木雄也さんかなと思っています(笑)。高木さんて、もともとJUMP内でいうと異色キャラに見えるんですよね。1人だけクールでワイルドなワルっぽい印象なので。JUMPのお子様集団のイメージに抵抗のある人も「高木くんはカッコいいよね」ってなりやすいんです。でも、実は中身とのギャップがすごくあって、最近ではバラエティ番組『いただきハイジャンプ』でもオチとして使われるなど、温かい人柄が引き出されてきていますね。


――なるほど。では、まだまだ伸びしろを感じるメンバーは?


田幸:八乙女さんでしょうか。彼は、なんでもできる一方でグループのことを常に背負ってしまうので、個人として好き勝手できていない印象なんですよね。山田さんや中島さんはドラマ、伊野尾さんはバラエティといった形で、メンバーに少しずつ嫁ぎ先みたいな得意ジャンルが見えてきている中で、八乙女さんは役者もバラエティもできて、アートの才能もあって、料理まで得意。じつは、どこに本腰を入れていくのか迷ってるんじゃないかなと。


――才能豊かで、楽しみですね。


田幸:そうですね。薮さんも、センスの塊だと思っています。作詞にしてもギャグにしても、言葉選びにセンスが光るんです。あのフニャフニャな愛らしい笑顔でキレのある毒舌が出てきたり、得意分野のサッカーに関しては止まらなくなってしまったり。Jr.歴が長かったため、まとめる方にいた薮さんですが、実はグループで一番自由人でもありますから、今こそそのフリーな発言力がJUMPの殻を破ってくれるのではと思っています。


――岡本圭人さんについては?


田幸:岡本さんも、私はバラエティで活きるタイプだと思いますね。とにかく性格がよく、誰よりもやさしいので、その素顔が浸透していったら、一気に人気が上がるのではないでしょうか。また、リアクション芸人的な役割も担えるのではとも思っています。辛い食べ物にも強いですから(笑)。そして、JUMPの魅力を語る上で、岡本さんはキーパーソンだと思っています。


――というと?


田幸:私が結論づけたJUMPの魅力は、9人の揃ったダンスパフォーマンスです。JUMPが一段上に上がったと感じたのも、全員でダンスを極めた結果だと思っているので。でも、岡本さんはデビュー時までダンス経験がなく、常にメンバーに一歩遅れを取っている状況だったんです。そこから、相当の努力をされたのでしょう。今では見劣りすることなく、揃えることができています。デビュー時は人数の多さゆえにまとまりのなかったJUMPでしたが、9人だからこそ魅せられるダンスという大きな武器を手にしたのは、本当に大きかった。でも、最近は歌番組が少ないので、なかなかJUMPの本領を発揮できていないもどかしさを感じますね。


――次に期待される展開は?


田幸:歌番組が少ないからこそ、バラエティ番組などで素の部分を見せて、いかにお茶の間に興味を持ってもらい、ステージまで足を運んでもらえるかが大事になってきます。そうした意味では、これまで地域限定で深夜でのオンエアだった『いただきハイジャンプ』が、12月30日にようやく全国ネットで、しかもお昼の時間帯で放送されることになりました。ここでの反響が、今後の活躍に大きく影響してくるんじゃないでしょうか。彼らにいい波が来ているのは確かです。この波を活かして、さらに高いジャンプを見せてほしいですね。