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ビルボード年間チャートに見る2015年のリアルヒット 三代目JSB「R.Y.U.S.E.I.」が2年越しで頂点に?

2015年12月29日 19:11  リアルサウンド

リアルサウンド

三代目 J Soul Brothersの登坂広臣(左)と今市隆二(右)。

参考:billboard Japan 2015年年間チャート


 ビルボード・ジャパンの年間チャート『Billboard JAPAN Music Awards2015』が発表された。というわけでこちらの今年のシングルランキングに目をやってみたのだが、とにかく1位が目を惹く。というのも、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEの「R.Y.U.S.E.I.」は、2014年に発売された楽曲なのだ。そういえばもうずいぶん長いこと、年間のヒットソングと言えばその年に発売されたものなのが当たり前だと思わされてきた。しかし昔はそうではなくて、前年に発売された超ロングヒット曲が翌年のベストとして語られることも当たり前のようにあった気がする。今年の1位は、そういう古い時代を思わせるところがある。


 しかし、この結果は納得のいくものだ。「R.Y.U.S.E.I.」のヒットはEDMらしさをきっちりと整えた楽曲の良さもさることながら、ランニングマンと呼ばれる特徴的なダンスが幅広い層から支持された結果と言えるもので、今年を通して人気は持続していた。この年間ランキングは短期的なCD等の販売数だけに頼ったものではない複合チャートなので、世間のリアルな楽曲の受容が反映された結果になったのではないかと考えられる。販売数だけを集計した結果だとAKB48の今年のシングル選抜総選挙の投票対象曲であった「僕たちは戦わない」などがさらに上位に入ってくるのだが、まあ「戦わない」という曲名なのだから、この曲は8位くらいでちょうどいいのではないでしょうか。


 さて楽曲と同様に、三代目メンバーのキャラクターも十分に一般層へ認知された。今年は三代目が名実共にブレイクした年だったと言っていいだろう。EXILEファミリー自体はAKBグループやジャニーズなどと同様、特典商法でCDセールスに拍車をかけてきたが、ここへきて一気に他グループとは違った存在感を示すことになったようだ。この三代目の成功は、EXILEファミリーが押し進めている世代交代をさらに堅調に進める結果につながっていくに違いない。


 一方ジャニーズからは嵐が2~4位にチャートインしており、こちらも変わらぬ人気ぶりを反映した結果になっている。しかし、今やとりわけメンバー同士の関係性を強調して見せる傾向にある嵐がジャニーズの中でも安定した人気を獲得しているのは納得のいくところで、これは前述のEXILEやAKBとも似たところがファンから支持されていると考えることもできるだろう。つまり今のリスナーは楽曲だけでなく、メンバー同士の関係も楽しみながら音楽コンテンツを支持しているのではないか。最近はそういう傾向が、9位のゲスの極み乙女。などバンド系のミュージシャンにも見られるようになっている。


 ついでにアルバムチャートにも言及しておくと、1位はDREAMS COME TRUEのベストアルバムである。この結果は判断の難しいものだが、あえて率直な言い方をさせてもらうと、1997年くらいに戻ってしまったような悩ましいものだと言うことができる。つまり年間で最も高く評価されるアルバムのアーティストがドリカムであり、しかもベスト盤でありというのは、90年代後半のノリから変わっていないように思えるのだ。もちろんその後も音楽産業はいろんな時期を経てきたのだが、ことシングルが注目される傾向にある最近の音楽チャートの状況を鑑みるに、アルバムのチャートももう少し大きな変化が実感できるものであってくれたらというのが正直なところ。EXILEファミリーが超ロングヒットで短期的なCD売り上げの勝負から脱し始めた今年、単に売り上げだけでなく純粋な楽曲の良さもさらに見直される傾向にある。だからこそ、しっかりと腰を落ち着けて聴くことができる良質のオリジナルアルバムにも評価が集まり、さらにそれが音楽産業の「今」を感じさせる新しいミュージシャンの手によるものであってほしい。というより、2016年はそういう年になってくれるのではないか。多分に願望を込めつつ、そう思わされるところである。


 ともあれ複合形式によって、今年の動向がよりよくわかるチャートではあった。ただ、リスナーの中にはそれでも結果に納得がいかないという人もいるだろう。しかしビルボード・ジャパンはこの結果を踏まえつつTwitterと第一興商のカラオケで歌唱をした回数が有効ポイントとなる一般投票企画もやっていて、より一般リスナーの声を積極的にチャートに採り入れようとしているようだ。そんなわけで、納得がいかない場合はそちらで投票するのもアリかと。(さやわか)