2015年12月28日 09:51 弁護士ドットコム
身の回りのモノを限りなく減らし、最低限のモノだけで暮らす「ミニマリスト」。そんな「ミニマリスト」にハマった夫に悩んでいる女性が、ネットの掲示板に書き込みをした。
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女性によると、ある日突然、在宅の仕事で使う道具の一部と時計がなくなっていたのだという。家中探しても見つからず、夫に聞くと「捨ててないよ~隠しただけ! ただ物がないこともいいもんだと実感してほしかった」と答えたのだそうだ。
夫の言葉を聞いた女性は「自分の物はいい! でも二度と私の物に触らないで!」と怒鳴ったが、夫は聞く耳を持たず、有名ミニマリストの「武勇伝的な話」を延々と語ったのだという。
隠された仕事道具はその後、冷蔵庫の上で、ホコリを被った状態で見つかった。女性は「ミニマリストに執心してから物を捨てるという事に関して旦那は別人のようです。 これ以上2人で話し合っても無駄かもしれないです。何かに執着=悪らしいので。きっと嫁も捨てたらサッパリ晴れ晴れなんだと思います」と語り、離婚も考えているという。
夫が「ミニマリスト」に執着し、夫婦で話し合いをしようにも、夫の言い分が支離滅裂で理解できないという場合、妻は離婚できるのだろうか。柳原桑子弁護士に聞いた。
「離婚は、夫婦が話し合って合意する離婚と、合意ができず、裁判所で判断してもらう離婚の二つに大きく分けられます。話し合いで離婚する場合は、その理由がどのようなことであっても、合意が成立しさえすれば離婚できます」
柳原弁護士はこのように述べる。
「おそらく、ミニマリストに執着している夫と、それを理解できない妻とで、価値観の折り合いをつけるのは難しいのでしょう。
ただ、いきなり離婚へと突き進むのは性急です。まずは夫婦で話し合い、たとえば、夫が立ち入れない、妻のプライベートな部屋をもうけるなど、一つ屋根の下でも共存できるギリギリの方法を提案してみてはどうでしょう。
それさえも認めないなら、もはや離婚するしかないと夫に提示し、その後で、離婚を考えても遅くはありません」
話し合いで決着がつかない場合は、どうすればいいのだろうか。
「最終的には、裁判所に判断してもらうことになります。その場合、ミニマリストの夫との価値観の不一致が、裁判上の離婚原因の一つである『その他婚姻を継続しがたい重大な事由』(民法770条1項5号)に該当するかどうかが審理されます」
審理のポイントは何になるのだろう。
「価値観の不一致により、ともに協力して同居生活を送ることができなくなり、夫婦関係が破たんしたといえるかどうかがポイントです。
夫に対して『困る』と言いつつも一緒に暮らし続けていて、家庭内別居といえる事情も見受けられないとすれば、夫婦関係が破たんしているとは言えず、裁判では離婚が認められないかもしれません。
いっぽう、同居していても、もはや生活がくっきり切り離されていることが明らかで、かつ互いに歩み寄りの余地がない場合には、裁判で離婚が認められる可能性があると思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
柳原 桑子(やなぎはら・くわこ)弁護士
1998年弁護士登録 第二東京弁護士会所属
離婚事件・遺産相続事件などの家事事件、破産事件、不動産関係事件等を中心に、民事事件を扱っている。「離婚手続きがよくわかる本」、「よくわかる離婚相談」、「相続・贈与・遺言」監修(いずれも池田書店)。
事務所名:柳原法律事務所
事務所URL:http://www.yanagihara-law.com/