2015年12月28日 09:31 弁護士ドットコム
消費税の軽減税率をめぐって、自民・公明両党は、外食と酒類を除いた「生鮮食品」と「加工食品」を対象品目とすることなどで合意した。対象品目については、消費税率が10%に引き上げられる2017年4月以降も、8%に据え置かれることになる。また、商品ごとに税率や税額を明記する請求書「インボイス」を導入することでも合意した。
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報道によると、インボイスは、事業者の納税額を正確に把握し、納税すべき消費税が手元に残る「益税」を解消するため、軽減税率の適用から4年後の2021年度から導入する。2017年4月からインボイス導入までは、請求書に印を付けるといった簡単な経理方式にするという。
インボイスとは、どのような仕組みなのだろうか。久乗哲税理士に聞いた。
「消費税は、最後にその商品を買う消費者だけでなく、メーカーや卸業者、小売業者という流通過程の事業者間でも、課税の対象となっています。各事業者は、その商品購入の際に支払った消費税と、売った際に消費者から得た消費税の差額を納税します。これを『仕入税額控除方式』といいます。
現在の日本では、税込の取引の総額から計算することになっています。この場合、帳簿に記載された金額に基づいた計算ができるため、『帳簿方式』と呼ばれています」
新たに導入される「インボイス」は何が違うのだろうか。
「『インボイス』では、請求書に記載された消費税額を足し合わせる形で、納税額を計算することになります」
一見すると、あまり差がないように見える。
「そうですね。しかし、経理的には大きな差があります。帳簿方式は文字通り、帳簿を作成し、その累計から仕入税額控除を計算します。コンピューターによって経理処理をしている場合でも、コンピューターへの入力は税込の取引金額1つでいいことになります。
一方、インボイス方式ですと、請求書に記載されている消費税額を累計して計算することになりますから、コンピューターによって経理処理をする場合でも、本体価格と消費税額を分けて入力する必要があります。1つの取引について2つの入力処理が必要ということになります。すなわちインボイス方式になると、経理処理のコストが倍増するのです」
なぜ、政府は導入しようとしているのか。
「それぞれの商品ごとに税額を記載するため、納税額を正確に把握できるというメリットがあるためです。しかし、そのコストは、最終的にはモノの価格に転嫁されて、消費者が負担することになります。つまり、軽減税率で減った消費税以上に、モノの価格が上がる可能性もあります。
経理処理のコストを上げないためには、8%と10%の複数税率採用後であっても、今までの帳簿方式を維持するべきだと思います」
久乗税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
久乗 哲 (くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に「新版検証納税者勝訴の判決」(共著)等がある。
事務所名 :税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/
(弁護士ドットコムニュース)