2015年12月28日 09:01 弁護士ドットコム
北海道の新千歳空港で12月中旬、離陸の準備をしていた航空機の中で、乗客が「爆弾を持っている」といった内容の話をしたため、出発が約2時間半も遅れるトラブルが起きた。
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報道によると、爆弾騒ぎがあったのは、ピーチ・アビエーションの関西空港行き・エアバスA320(乗客乗員168人)の機内。乗客の男性5人グループのうち1人が「爆弾持っている」などと話すのを客室乗務員が聞いたという。ピーチ社は乗客全員を避難させて、手荷物検査をしたが、不審物は見つからなかった。
通報を受けた北海道警は悪質ないたずらとみて、男性たちから事情を聞いたということだ。今回のように、航空機内で「爆弾を持っている」と話した場合、何らかの罪に問われることがあるだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。
「客室乗務員に聞こえることを意図して、機内の乗客が『爆弾を持っている』などと発言することは、威力を用いて航空会社の業務を妨害したとして、『威力業務妨害罪』に問われる可能性があります」
実際には爆弾を持ち込んでおらず、乗客の冗談だった場合はどうだろうか。
「たとえ冗談であったとしても、そのような発言を聞いた航空会社としては、安全を確認するなどの必要が生じ、通常の業務を妨げられることになるでしょう。
なお、業務妨害罪は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています(刑法233条)」
ほかの罪に問われる可能性はあるだろうか。
「『爆弾を持っている』という発言によって、航行中の航空機の針路を変更させたり、その他その正常な運行を阻害した場合、いわゆる『ハイジャック防止法』の航空機運航阻害罪に問われます。
航空機運行阻害罪は、1年以上10年以下の懲役に処される可能性もあります(ハイジャック防止法4条)」
民事上の責任を問われる可能性はどうだろうか。
「こうした発言によって、航空会社に損害が発生した場合、航空会社から民事上の損害賠償請求を受ける可能性があります。
航空会社は一定時間以上運航が遅れたときは、乗客に料金を払い戻すなどの規定があります。
運航を遅れさせたことによって、多数の乗客に払い戻しをしなければならなくなった料金や、そのほか航空ダイヤの乱れによる損害、安全確認のために要した費用など、航空会社からの賠償請求は高額になることも予想されます。
世界的にテロへの警戒感が高まっている昨今ですから、不用意な発言は『冗談だった』では済まされません。十分注意する必要があるでしょう」
石井弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
石井 龍一(いしい・りゅういち)弁護士
兵庫県弁護士会所属 甲南大学法学部非常勤講師
事務所名:石井法律事務所
事務所URL:http://www.ishii-lawoffice.com/