2015年12月25日 11:01 弁護士ドットコム
職場でスッピンで過ごしていたら、後輩の男性から「化粧しろ」と言われたーー。ネットの掲示板に、技術系の仕事をしている26歳の女性から怒りの投稿があった。同僚から、「男だって朝早く起きて髪を整えて眉毛綺麗にしてヒゲ剃ってるんだぞ、男でそれなのに女のくせに」と言われたそうだ。
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この女性は、眉毛の形や髪型を整えるなど清潔さは保っているという。また、接客業などではなく、技術系の仕事のようだ。「私は見た目じゃなくて技術を売る仕事」「そもそも上司もマネージャーも何も言わない。仕事に関係ないのに、なんで化粧を強要されなきゃならないの?わけがわからない」と憤っている。
特に、この女性のように、接客や営業の仕事ではない人に対して、「化粧をしろ」ということは問題ないのだろうか。白川秀之弁護士に聞いた。
「女性に対して『化粧しろ』という発言は、職場でのセクシュアルハラスメントに該当するでしょう。
厚生労働省の定義によれば、職場におけるセクハラとは、職場において行われる『労働者の意』に反する(中略)『性的な言動』により就業環境が害されることです。
この『性的な言動』には、性の違いに基づく嫌がらせ的な発言を含みます。『女性なんだから化粧しろ』という発言は、女性であれば化粧をして当たり前という考えを強制するものです。その女性が職場内で自分らしく働くことに影響を与えます。この点で、セクハラに該当するのです。
逆に、この後輩男性が『おしゃれに気をつかうなんて男らしくない』と言われた場合を考えれば、より理解できると思います。
男らしさ、女らしさについては、多様な考えが尊重される社会です。職場の仲間とはいえ、他人に考えを押しつけるような言動は控えるべきでしょう。また、会社は、そういった言動が働く者の環境を害すると言うことを認識して、ふだんからセクハラ対策の教育をすべきです。
もちろん、このようなセクハラがただちに法的な問題になるわけではありません。しかし、回数が積み重なったり、態様がエスカレートすれば、この女性は後輩男性に損害賠償請求をすることができます。また、会社も、就業環境調整義務違反を問われることがありえます」
白川弁護士はこのように話していた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
白川 秀之(しらかわ・ひでゆき)弁護士
2004年、弁護士登録。労働事件が専門だが、一般民事事件も幅広く扱っている。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会委員。所在エリア:愛知名古屋北区
事務所名:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所URL:http://www.kita-houritsu.com/