2015年12月25日 09:21 弁護士ドットコム
外出先や緊急で必要なとき「ちょっと貸して」ーー。結婚している夫婦なら、そんなお金のやりとりは珍しくないでしょう。しかし今回「発言小町」に相談を寄せたトピ主(48)の夫(55)は、根っからのお金にルーズな人。それだけに「ちょっと貸して」ではすまないようです。
「結婚前からたびたび財布を忘れたといい、立て替えるという形で私が出してきました。ここ数年はギャンブルにはまり」借金を作ったといいます。トピ主の給料袋から勝手にお金を抜いたり、娘のためにトピ主の父母がくれた大学のお祝い金(100万円)から30万円分を使ってしまい、「ここ5年間だけでも夫に『貸した』または『盗られた』お金は200万を超えています」。
そこで、別居を始めた2人。「『いつか絶対返す』が口癖だったため『念書を書いてほしい。そのために会いたい』と思い切ってメールしたら『いいよ』と返信がありました」。しかし「いつも現金だったため、夫に貸した盗られたの証拠はありませんが『実母が亡くなったらその遺産で返す』という内容の念書を書いてもらおうと思います」。
では、どんな風に書けば良いのでしょうか? 近藤 公人弁護士に聞きました。
(※この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「いつか夫にお金を返してもらえるのか」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/1025/736690.htm?o=0)
A. 「念書は夫に気づかれないところに保管しましょう」
見解は分かれるところです。
私は、娘の大学お祝い金に使ったお金は『返還義務あり』、給料袋から夫が勝手に抜いたお金は『返還義務なし』、子ども名義の財産からの分は『子どもに対する返還義務あり』、妻の結婚前の財産は『妻に対する返還義務あり』になると思います。
給料袋から勝手に抜いた給与や、また婚姻後築き上げた財産は、夫婦共有財産のものですから、給料から勝手に持って行った場合、本来、夫が使わなければあった財産が減っていることになります。
減った金額を確定するために、念書(文書)はもらっておいた方が良いでしょう。離婚時の財産分与時に、財産割合を有利にできます。
そして「念書」が契約と評価されれば、法的拘束力があります。しかし、夫婦間では、この契約を、いつでも、取り消すことができます(民法754条)が、判例は、夫婦間が破綻しているときには、取消は認められないとしています。
では、念書の書き方について説明しましょう。
まず、契約と評価されるためには、両当事者の署名が必要です。自筆でボールペンで(消えないもの)、自筆で署名してもらい押印してもらった方が良いでしょう。印鑑は「認め」でも結構ですが、実印の方がよりよいです。
用紙は、コピー用紙でも便箋でも結構です。なお、ワープロした文書に最後に署名押印してもらって大丈夫です。
本債権者(貸主)、債務者(借主)、使った年月日、使った金額、返済の合意、返済期限の記載が必要あります。具体的には、お金を渡した年月日、金額、現時点の合計金額を記載して下さい(分からないときは、いつからいつまでに、いくら渡したかを記載して下さい)。返済期限は、「実母が亡くなったとき」と記載することになるでしょう。
重要な証拠ですので、夫が後で、破ったりしないように、夫に気づかれないところに保管するのが良いでしょう。
【取材協力弁護士】
近藤 公人(こんどう・きみひと)弁護士
モットーは「依頼者の立場と利益を第一に」。滋賀県内では大きな法律事務所に所属し、中小企業の法務や、労働事件、家事事件など、多種多様な事件をこなしている。
事務所名:滋賀第一法律事務所
事務所URL:http://www.shigadaiichi.com/