2015年12月24日 14:41 弁護士ドットコム
会社員として働くかたわら、退社後や休日の時間を使って、副業にいそしむ人もいるだろう。「1年で税込20万円の収入がありました」という会社員から、税理士ドットコムの相談コーナーに質問が寄せられた。
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相談者は、会社員として勤務するほか、ウェブサイトのデザインやイラストレーターとして働き、副収入を得ていた。「2016年度に個人的な申告が必要になるのか、雑収入として問題がないのか。また本業の会社に伝わるのか?」と気をもんでいるようだ。
20万円の雑収入であっても、年末調整や確定申告で会社にバレることはあるのだろうか。どんな注意が必要になってくるのだろうか。佐原三枝子税理士に聞いた。
「投稿された方は、アルバイトではなく、事業所得的な副業だとして、お答えします。
1つの会社から給料をもらっている一般的なサラリーマンの方が、退社後や休日にちょっとしたネット販売やアフィリエイト、投稿などで収入を得た場合、その『所得』が20万円以下なら確定申告の必要はありません」
佐原税理士はこのように指摘する。
「ここで問題となる20万円という上限は、『収入』ではなく『所得』であることに注意してください。実際に得た収入や売上から、仕入代や交通費などの経費を引いた金額を指します。なお、これはあくまで所得税の規定で、住民税には適用がありません。所得が20万円以下の副業でも、別途、市役所には住民税の申告をしなくてはいけません。
また、副業は『年末調整』に関係するのかと心配される方がいますが、それは誤解です。
副業の有無にかかわらず、年末調整は、その年の最後のメインの給料をもらう会社で必ず行います。年末調整で行うのは、扶養家族の人的控除、2年目以降のローン控除や保険料控除など、限定された事柄を給料の税金から精算することだけです。
副業の収入は年末調整には関係しませんし、会社に伝える必要もありません。年末調整で副業が会社にバレることはありません」
確定申告での注意点はあるのだろうか?
「医療費控除や初年度のローン控除などのため確定申告をする場合は、20万円以下の所得であっても、給料と合わせて申告しなければなりません。確定申告はその年のすべての所得を申告するものだからです。
その際、副業がバレないようにするには、市町村から会社に送付される住民税の納税通知書に、副業の所得が記載されないようにすることです」
具体的にはどのようにするのか。佐原税理士は実践的なアドバイスを伝える。
「確定申告をするときに、確定申告書の第2表の下部、『住民税』の事項のなかの『給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択』欄にある『自分で納付』に○を入れます。
住民税の申告だけをする場合でも、同様の項目がありますので、「自分で納付」に○をします。
こうすることで、会社には給料に対応する住民税のみが通知され、その他の所得は自分自身に通知されます。
とはいえ、市役所側の入力ミスで、会社にすべての所得の通知が届いた事例もあります。申告後に市役所に確認をするなどの細かい対応が必要です。
逆に、副業の所得が赤字だったらどうなるでしょうか。副業の赤字を事業所得として給料と損益通算して確定申告をすると、本来の額より少なくなった住民税を見た会社に、副業がバレてしまいます。副業が赤字なら、申告しないでおくことです。
就業規則等に副業禁止がうたわれていないことを確認したうえで、本業の勤務に差し障ることなく、競業しないなどのマナーを守り、バレても認めてもらえるような環境づくりも必要ですね」
佐原税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
佐原 三枝子(さはら・みえこ)税理士・M&Aシニアスペシャリスト
兵庫県宝塚市で開業中。工学部やメーカー研究所勤務から会計の世界へ転向した異色の経歴を持つ。「中小企業の成長を一貫してサポートする」ことを事務所理念とし、税務にとどまらず、経営改善支援、事業承継や海外事業展開の支援を手掛けている。
事務所名 : 佐原税理士事務所
事務所URL:http://www.office-sahara1.jp/
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