2015年12月23日 07:51 弁護士ドットコム
妻子がありながら、日々会社で顔を合わせる同僚と深い仲になってしまった―—。そんな社内不倫中のあなたへ、身につまされる話をお届けします。
会社の同僚と不倫中のある男性は、会社にバレないよう、不倫相手とこっそり逢瀬を重ねてきたそうです。ところがある日のデート中、運悪く上司と遭遇。「不倫は風紀を乱す」と厳しく注意されたため、男性は「懲戒処分をされるのだろうか」と心配しています。
社内不倫が会社にバレた場合、懲戒処分されても仕方ないのでしょうか?山田長正弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. 社内不倫によって業務に支障が出れば、懲戒処分の可能性も
不倫は、夫婦関係がすでに破たんしているなどの事情がない限り、民法上は違法とされますし、離婚の理由にもなりえます。法律上はもちろん、倫理的にも社会的にも許されない行為です。
しかし、だからといって、不貞行為が社内の処分の理由になるか否かは別の話です。不貞行為はあくまでも私生活上の問題ですので、ただちに処分の理由とすることはできません。
企業が社員を処分する際の理由となるのは、企業における秩序が乱れるなど、企業運営に具体的な支障が発生する場合に限られます。具体例として、次のような場合です。
・最終学歴や職歴、犯罪歴を詐称
・業務上の指示・命令に従わない
・会社を名指しして、SNSなどで誹謗中傷する
・会社の許可なく他社で働いたり、自ら事業を営む
このように、社員が企業秩序に反する行為をしたため、企業運営に具体的な支障が生じた場合、会社は制裁のために、「減給」や「降格」などの懲戒処分を行うことができます。
では、「社内不倫がバレた」というケースはどうでしょうか?
社員が不倫のような不貞行為を行ったとしても、ただちに企業運営に具体的な支障が発生するとはいえません。ご相談者は、相手の女性と「こっそり関係を続けてきた」ということですし、社内の風紀を乱していたわけではなさそうです。単に社内不倫が発覚した、というだけでは、会社はその社員を懲戒処分することはできません。よって、企業秩序の違反がないのに懲戒処分を行った場合、その懲戒処分は無効です。
ただし例外的に、不倫が懲戒処分につながることもあります。
たとえば、グループで仕事を行うような状況で、不貞行為をしている者同士しかコミュニケーションを取らず、他のメンバーをないがしろにしたために、業務が円滑に遂行されないケースです。また、職務時間中に、不貞行為の相手とデートをするなどのケースも、懲戒処分の対象となりうるでしょう。
では、就業規則で社内恋愛が禁止されている場合に、規則を破って不倫関係になってしまった場合はどう考えられるのでしょうか?
懲戒処分を受けても仕方がないような気もしますが、就業規則はあくまでも企業の秩序を守る目的で定められたものです。よって、個人の恋愛の自由まで縛ることはできません。たとえ社内恋愛禁止のルールを破ったとしても、それだけを理由としてただちに社員に対して懲戒処分することは認められないでしょう。
【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
山田総合法律事務所 パートナー弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/