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<再婚禁止>違憲判決当日に「婚姻届」の運用を変更ーーなぜ法改正前に動いたのか?

2015年12月22日 10:31  弁護士ドットコム

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女性にだけ離婚後6カ月間、再婚を禁止していた民法の規定について、最高裁判所は「100日を超える部分は憲法違反」という判断を示した。画期的な判決が出た12月16日、法務省はさっそく、離婚後100日たった女性について婚姻届を受理するよう、全国の自治体に通知を出した。法律が改正される前に、行政が運用を見直すスピード感のある動きだった。


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ただ、法改正を待たずに、行政が運用を変えることは問題ないのだろうか。憲法違反の判決があった場合、このように速やかな動きがあるのが通例なのだろうか。この裁判の原告代理人を務めた作花知志弁護士に聞いた。



●「違憲とされた法律は無効」ではない


「最高裁判所により法律が憲法に違反するとした違憲判決が出された場合に、その判決の効力は、法律を一般的に無効とするのか、それとも法律は当然には無効にはならないのかという、違憲判決の効力と関わる問題です。



日本国憲法の解釈として、最高裁判所により違憲判決が出された場合でも、その判決はその裁判の当事者間にだけ効力が生じ、違憲とされた法律は当然に無効とされるものではないとされています。



ですので、今回出された、民法733条が規定する女性の再婚禁止期間の『100日を超える部分』を憲法違反とする判決の場合も、国会の法改正がなければ、民法733条の規定そのものは変わらないことになります」



●なぜ法改正を前に「通知」は出されたのか?


ではなぜ、行政は法改正を待たずに通知を出すことができたのか。



「行政は法律に従う義務があるのですから、国会の法改正があるまでは、現行の民法の規定に従った運用を行うべきとも思えるところです。



しかし最高裁の違憲判決後も、離婚から100日たった女性の婚姻届を行政が受け付けなかった場合、今回と同様の訴訟がまた起こされることが予想されます。その際には、ほぼ確実に違憲・無効の判決が出るものと考えられます。



それを見越して、行政は法改正を待たずに、違憲判決を踏まえた通達を出し、事実上国会の法改正を先取りする法運用を行う傾向があります。また、最高裁大法廷で違憲判決が出されたということは、将来国会による法改正がされることが当然予想されるとも言えます」



過去には、どんな事例があったのだろうか。



「日本で初めて最高裁判所大法廷が違憲判決を出したのは、1973年のことです。当時の刑法200条が規定していた尊属殺の規定は、憲法14条の『法の下の平等』に反して無効であると判決を下したのです。



その違憲判決後、検察庁は尊属殺に該当する事件でも、通常の殺人事件として起訴する運用を行いました(刑法200条が削除されたのは1995年)。



今回も最高裁判所大法廷で違憲判決が出されている以上、その違憲判決に従った法運用を行うことこそ『法の下の平等』の観点からも望ましいということで、法務省の通知があったのだと思います」



作花弁護士はこのように指摘していた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属

事務所名:作花法律事務所
事務所URL:http://sakka-law-office.jp/