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世紀の頂上対決!  動員は『妖怪ウォッチ』、興収は『スター・ウォーズ』で決着!

2015年12月21日 22:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)2015 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

 ちょうど1年前に、『スター・ウォーズ』10年ぶりの新作と『妖怪ウォッチ』1年ぶりの新作の公開時期がバッティングすることが判明した時点で、12月第3週が2015年の映画興行における最大のクライマックスになることは予想できたことだったが、結果においてもやはり今年最高レベルの記録が飛び交うこととなった。


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 434スクリーンで公開された『映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン!』は土曜初日からの2日間で動員97万4557人、興収10億5780万8800円を記録。その2倍以上の958スクリーンで公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は金曜初日(初回は18時30分から)からの3日間で動員は約104万人、興収は約16億円を記録。そのうち、土日2日間の数字は動員80万258人、興収12億4502万3900円。慣例でランキングの対象となるのは土日2日間のみなので、動員ランキングは入場者先着プレゼントであるメダル目当ての子供客を集めまくった『妖怪ウォッチ』に軍配。興収ランキングは特別入場料(TOHOシネマズのみ)、IMAX、4DX、MX4Dなどの上乗せ料金によって『スター・ウォーズ』に軍配。正直に言おう、昨年の初日2日間での興収16億2889万3000円から約3分の2に減少した『妖怪ウォッチ』は予想通り(とにかく大ブーム真っ只中の去年の数字が異常すぎた)で、『スター・ウォーズ』は『妖怪ウォッチ』の2倍以上のスクリーンを占拠していたことを踏まえると期待を下回る初動と言わざるを得ない。


 それしても、『スター・ウォーズ』ファンとしては、結局土日2日間の動員で『妖怪ウォッチ』に負ける程度なら、金曜日に世界同時公開を謳いながら日本だけで変則的な18時30分公開となったのは「一体何のためだったんだ!?」と愚痴の一つもこぼしたくなる。その口実として用意されていた「限定メモリアルパンフ」も、初日の東京の各劇場ではどこも早々に品切れて後日通販での代引き対応になっていたという報告もいたるところであがっている(自分も買えなかった)。夕方~夜のニュースで大々的に取り上げられるのには、初回をその時間に設定するのがちょうどよかったのかもしれないが、来年以降のスピンオフ&続編でも似たようなことが繰り返されるのだけは勘弁願いたい(そもそも、今後は海外と同時に公開されるかどうかもカレンダー的に怪しいのだが)。


 ただ、この結果をもって「『妖怪ウォッチ』の勝利、『スター・ウォーズ』の敗北」とするのは完全な早とちりだ。1日早い公開だったこともあって、累計ですでに6万人以上&5億円以上の差をつけている『スター・ウォーズ』の動員&興収を『妖怪ウォッチ』がこの先一瞬でも抜くことは至難の技だろう。昨年の結果からもわかるように、日本映画界のあらゆる初動記録を塗り替えた『妖怪ウォッチ』第1作は、結局累計では約78億の「年間3位」という凡庸な記録で、入場者プレゼントに牽引された極端な初動型興行。対する『スター・ウォーズ』は平日にも強く(公開4日目となる本日月曜日は、まだ小学生が二学期中ということもあって『妖怪ウォッチ』を圧倒している)、また2回、3回と劇場に足を運ぶリピーターの数も他の作品とは比べものにならないほど多い。そう、実は勝負という点ではもう決まっていて、昨年同じように初動で敗北を喫したディズニーの『ベイマックス』が翌週以降も数字をキープして、超初動型『妖怪ウォッチ』を突き離していった以上の差で、今年も勝者はディズニーの『スター・ウォーズ』であることは間違いない。


 しかし、全米をはじめ世界中で歴代の初動記録を更新しまくっているのに比べると、日本における今回の『スター・ウォーズ』フィーバーは世代的(30代以上)にも地域的(都市型)にも今の時点ではやや限定されている。もっとも、ファンからの評価は概ね高く、女性主人公のレイや、新キャラクターのBB-8が早くも支持されているのを見ると、女性客や子供客にまだ伸びしろはあるはず。公開規模、広告費、タイアップ量、今後の続編&スピンオフ展開を踏まえると今回の『スター・ウォーズ』にとって100億円は最低でもクリアしなくてはいけないラインだと推測できるが、その可能性はまだ十分にあると見る。(宇野維正)