2015年12月21日 11:41 弁護士ドットコム
「いい名前ね。きょうだいはいるの?」「ケーキは好き?」。アメリカの玩具会社マテル社が11月に発売した、会話ができるバービー人形「ハロー・バービー」について、「子どものプライバシーを損なうのではないか」と不安の声が上がっている。
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報道によると、「ハロー・バービー」は、人口知能(AI)対応で、子どもがバービー人形に話しかけると、その内容に返答する機能がついている。その仕組みは、Wi-Fiを通じてインターネット経由で事業者が情報を管理する「クラウド」に情報を送信し、AIがその内容を分析して適した答えを考え出し、それをバービーが子どもに伝えるというものだ。
「ダンスが好き」「自転車に乗るのが好き」といった子どもの趣味や趣向を覚え、その後の会話に反映させるなど、話を通じてバービーが学習し、成長していくという。しかし、子どもの好みや、家族や友達を含む個人情報が蓄積されていくのではないか、あるいはハッカーに情報を盗まれないだろうかといった懸念が、発売前から指摘されていた。
「ハロー・バービー」のAIの運用で会話の分析を担当する会社は、「会話データを蓄積するのは、より良い会話を構築するため」と釈明しているようだが、日本で同様の商品が発売された場合、こうした機能は法的に問題がないのだろうか。プライバシー、個人情報の問題に詳しい齋藤裕弁護士に聞いた。
「会話データが個人を特定することができないような形で蓄積される場合、法的には特段の問題はないと考えます」
齋藤弁護士はこのように指摘する。では、個人が特定できるようなデータを蓄積した場合は、どう考えればいいだろう。
「その会話データが個人を特定することができるような形で蓄積される場合、どのような利用目的で会話データを使うのか客に知らせておく必要があります(個人情報保護法18条1項)。
通常は、商品の梱包の目立つところに記載するべきだと思われます。
そのような対応をしたうえで会話データを蓄積することは、個人情報保護法上も、プライバシー保護の観点からも、違法とは言えないと思います。
客としては蓄積が嫌であれば、AIバービーのような商品を『購入しない』という選択をすることも可能だからです」
もし、情報が漏えいした場合、商品を販売した会社は何らかの責任を負うのだろうか。
「蓄積されたデータが漏えいし、特定の個人の趣味嗜好などが公になってしまったような場合は、損害賠償責任が生ずる可能性はあると思います。
企業としては、漏えいしないようにハッカー対策などを取る必要があります」
齋藤弁護士はこのように述べていた。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
齋藤 裕(さいとう・ゆたか)弁護士
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。サラ金・クレジット、個人情報保護・情報公開に強く、武富士役員損害賠償訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。
事務所名:新潟合同法律事務所
事務所URL:http://www.niigatagoudou-lo.jp/