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WHITE ASH、音楽で“つながった”渋谷クアトロ公演レポ レア曲やファンとのセッション披露も

2015年12月20日 20:21  リアルサウンド

リアルサウンド

WHITE ASH(写真=柴田恵理)

 WHITE ASHが、年内最後のワンマンライブ『Charity LIVE 'Cycle' 2015』を12月13日、渋谷CLUB QUATTROで開催した。先月、両A面シングル『Insight / Ledger』のリリースツアーを終えたばかりの同バンドが今回行ったのは、福島出身メンバー・山さん(Gt)が中心となって行っている自主企画。昨年に続き2回目の開催で、「福島のために、WHITE ASHとして、音楽で会場のみんなともっと1つになりたい」との思いがこめられたライブには、普段以上の熱量とともに、終始あたたかい空気が流れていた。


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 SEが流れ始めると同時に手拍子がスタート。オレンジ色に発光したステージに向かって、一気に観客が前へなだれ込む。打ち込みのビートに刺さるギターリフが鳴ると、疾走感のある「Insight」が始まった。“正義”をイメージして制作されたというこの曲は、アークティック・モンキーズから影響を受けたロックサウンドを得意とする彼らの楽曲のなかでも、ストレートなギターサウンドが際立つ一曲。剛(Dr)のドラミングから始まり、ベース、ギターとそれぞれの楽器のグルーヴが印象的な「Thunderous」では、のび太(Vo&Gt)のささやくような歌声と彩(Ba)のコーラスから生まれる怪しげな雰囲気から跳ねるようなドラムビートに突入、そのビートに合わせて上がる観客のテンションは、のび太の歌声を合図としてピークに達するかのようだった。


 今回のライブでは、WHITE ASHの様々な表情を見ることができた。普段は、重厚な低音の効いた楽曲から連想されるクールなライブパフォーマンスの多い彼らだが、今回は多彩な楽曲でバランスよく構成され、新たな彼らの魅力を感じることができたのではないだろうか。のび太もMCで「いつもはCDを発売したリリースツアーみたいな感じがほとんどなんですけど、“Cycle”に関してはそういうリリース関係のイベントじゃないから、好きな曲をやれるということなんです」と普段とのライブの違いを説明し、「僕らシングルとかアルバムとか色々作ってるんですけど、シングルのカップリング曲ってなかなか日の目を見ないことが多くてですね……だけどカップリングも、いい曲多いんだよね」と本音を明かした。


 隠れキラーチューンの多いカップリング曲からまず披露されたのは、2ndシングル『Kiddie』収録の「New Wave Surf Rider」。普段あまり演奏されない曲でも、彩はのび太の歌声を生かすコーラスをしっかりと歌い切る。続く5thシングル『Crowds』の「Queen of Boogie-Woogie」では、シンガロングが会場全体へ広がった。そして6thシングル『Hopes Bright』収録の「Faster」が終わると、抽選で選ばれたファンが、メンバーと一緒に好きな曲をステージ上で演奏するという特別企画が披露された。そのコラボ曲として選ばれたのも「I Wanna Be Your Valentine」という、3rdシングル『Would You Be My Valentine?』のカップリング曲。のび太も「カップリングいいねぇ」と、この選曲にはご満悦な様子。WHITE ASHに憧れてバンドを始めたというファンと彩のツインベースから始まる同曲のセッションが始まると、会場は一気に和やかな雰囲気に包まれた。そしてその空気感を引き継ぐように、のび太はアコースティックギターに持ち替え、季節感のある「Xmas Present For My Sweetheart」を披露。この曲は最後のフレーズ以外が日本語詞で歌われる。歌詞に込められたメッセージがストレートに伝わり、普段の彼らの楽曲とは一味違ったあたたかさを感じる一曲だ。


 先日発表された、来年3月16日リリースの4枚目のフルアルバム『SPADE 3』から新曲「Blaze」も披露された。その後、「Jails」 「Crowds」「Paranoia」と、ライブでもおなじみのナンバーで一気に畳み掛ける。「Crowds」では、サビ前のアドリブで観客を焦らし、「Paranoia」では、ギターを下ろしたのび太が動き回って観客を煽る。それに応えるような観客からのコールに負けじと演奏する楽器隊。どんなにアグレッシブさが増してもブレることのないグルーヴこそが、WHITE ASHのライブでの強みだ。ギターの不気味なメロディから始まる「Pretty Killer Tune」では、のび太、山さん、彩が交互にメインボーカルを務める掛け合いと、観客のコール&レスポンスやシンガロングが混ざり合い、盛り上がりは最高潮を迎えた。


 ライブ終盤、やっと話す機会を与えられた山さんは「“Cycle”というイベントを続けてこれているのは、みなさんの応援のおかげです」と、改めて観客への感謝の気持ちを伝え、「会場募金や今回のチャリティグッズの収益を合わせた金額を使って、福島県浪江町立浪江小学校へ楽器を贈呈させていただきます。子供たちが将来ステージに立つ、バンドを始めるきっかけになればと思います」と、イベント名「Cycle」にこめた思いを、音楽を介した形で実現したいと明かした。本編最後には、この企画のテーマソングとも言える一曲「(Y)our Song」を熱唱。観客は頷きながら温かい眼差しで聴き入る。その光景は、まるでバンドとの繋がりをそれぞれが確認しているかのようだった。アンコールでは、新アルバムから「Spade Three」を最速披露。ラストを飾った「Stranger」では、メンバー4人が思い思いに音を掻き鳴らし、同公演の幕を下ろした。


 3rdアルバム『THE DARK BLACK GROOVE』以外の全シングル・アルバム(4rd新アルバムも含め)13枚のCDの収録曲から楽曲が披露された同公演。カップリング曲や新曲の披露、ファンとのセッション企画など、セットリストの自由度も高く、何よりメンバー全員が生き生きとライブを楽しむ姿が印象的だった。ライブ終了後は、“つながり”と“感謝”の気持ちを込め、メンバー4人がハイタッチで来場者全員を見送った。


 彼らはこれまで、サウンドやパフォーマンス、すべてにおいて“シンプルかつカッコイイ”ことを貫いてきたが、それは今回の取り組みにもしっかりと反映されていた。今後もそのようなスタンスは崩すことなく、新たな姿を見せてくれるのではないだろうか。まずは、これから届く新曲を楽しみに待ちたい。(大和田茉椰)