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賃貸マンションの無断「また貸し」が問題にーー「民泊」実現に向けた法的課題は?

2015年12月20日 09:41  弁護士ドットコム

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自宅の空き部屋を旅行者に貸して、ホテル代わりに利用してもらう「民泊」をめぐり、賃貸マンションが家主に無断で「また貸し」されるケースがあることが報じられ、話題となった。


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毎日新聞によると、「妻と子どもと住む」と言って部屋を借りた男性が、民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」を通じて旅行者に1泊1万6000円で貸していたケースや、「社宅」名目で賃貸契約を結んだ部屋が、やはりサイトを通じて無断でまた貸しされていたケースなどがあるという。



賃貸物件を「民泊」として利用することは、法的にどんな問題があるのだろうか。不動産の問題に詳しい瀬戸仲男弁護士に聞いた。



●契約が解除される可能性がある


「まずは、法律関係を整理しましょう。



賃貸物件を『民泊』として利用するケースの登場人物は、物件を貸している『大家さん』、借りている『店子さん』、民泊として利用する『旅人さん』の3者です。



大家さんと店子さんの関係は『賃貸借契約』ですから、主に民法と借地借家法が適用されます。



店子さんと旅人さんの関係については、少し考える必要があります。これを『賃貸借契約』であると考えれば、民法612条の無断転貸の問題になり、大家さんは、店子さんとの間の賃貸借契約を解除することができます。



しかし、旅人さんが民泊を利用するのは数日、長くても1か月未満だと思われます。そして、旅人さんは、家具や寝具などを持ち込まずに備え付けのものを利用するでしょうし、水道・光熱費なども支払わず、ましてや住民票を移すなどということはないでしょう。



つまり、旅人さんは民泊物件に『居住する』わけではなく、ただ単に『宿泊施設として利用する』だけだと思われます。そうだとすると、旅人さんが店子さんに支払う金員は『賃料』ではなく『宿泊代金』であり、店子さんと旅人さんの間の関係は『賃貸借契約』ではなくて、旅館業に近いものになると思われます」



であれば、賃貸物件を大家に無断で民泊として利用しても、賃貸契約を解除されないのだろうか。



「そうではありません。店子さんが物件を民泊として利用することを隠していた場合などは問題です。大家さんは、店子さん本人が居住するものと信頼して賃貸借契約を結んでいるはずです。



それなのに、無断で民泊として物件を利用することは、大家さんと店子さんの信頼関係が崩壊することにつながります。目的外の利用として、やはり賃貸借契約が解除される可能性があります。



民泊として利用されないようにするためには、大家さんと店子さんの間の賃貸借契約書に居住者の範囲(または名称)を明示し、その者以外の利用を禁止する旨の条項を入れておくとよいでしょう」



●シェアハウスと同じ問題が生じる可能性も


旅館業としてあつかわれるということは、仮に大家の許可を得たとしても、賃貸物件を民泊に利用することは、法的に問題があるのだろうか。



「料金を受け取って宿泊者を泊めるためには、原則として旅館業法で定められた要件を備えて、行政の許可を得る必要があります。無許可で営業することは原則として、違法です。



民泊について、大規模な摘発は行われていないようですが、これは監督官庁がお目こぼしをしているといっていいでしょう。



ただ、先日から、厚生労働省は『民泊』を旅館業法に規定されている『簡易宿所」として捉えて、規制の要件を緩和する方向に動き出すことになったことが報道されています。



簡易宿所というのは、たとえば、カプセルホテルや民宿などを指します。現在の旅館業法では簡易宿所の経営について、客室の延べ床面積が33㎡以上であることや、帳場(フロント)の設置義務等が規定されています。



これらの規制の要件を緩和して、民泊をやりやすくしようとしています」



なぜ、規制を緩和しようとしているのか。



「背景には、旅行者の急増と宿泊施設の不足があります。数年後の東京オリンピック、さらには観光立国の国策などの影響で、我が国を訪れる旅行者は増えています。急増する旅行者の宿泊施設を確保する必要性から、国は民泊を推進しようとしているようです」



民泊に、ホテルなどの正規の宿泊施設の代わりがつとまるだろうか。



「たしかに、民泊を安易に認めることには反対意見もあります。



仮に、民泊を広く安易に認めてしまった場合、国外から持ち込まれる感染症や伝染病の問題、犯罪行為に利用される危険性、火災などの消防法の問題、食中毒などの食品衛生法の問題、マンションなどの共同住宅の場合の近隣住民への迷惑行為など、多くの問題点が指摘されています。



これらの問題点を踏まえて、従来は『旅館業法』が厳しい規制を行っていましたが、これを緩和して外国からの観光客を呼び込もうというのが、国の方針です。『経済』の面からは『観光客大歓迎!』ということかと思われますが、規制緩和された場合の防災、衛生、安全面等のケアは十分に行ってほしいものです。



また、ホテルのような高級分譲マンションを購入し、民泊に利用しようというケースも現れてきましたが、他の住人にとっては迷惑なことです。この問題は、少し前に問題になった『シェアハウス』の問題点と同じです。見知らぬ人間が出入りし、夜間に騒いだり、ゴミ出しなどのルールが無視されたりといった迷惑行為が頻繁に発生する可能性が高いと推察されます。



このような動きに対しては、マンションの管理規約を改正して、民泊としての利用を制限するなどの自衛策が必要です。対策は早めに行うべきでしょう。専門家に相談するなどして、早急に管理規約・利用細則を改正することをお勧めします」



瀬戸弁護士はこのように述べていた。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
瀬戸 仲男(せと・なかお)弁護士
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。
事務所名:アルティ法律事務所
事務所URL:http://www.arty-law.com/