年の瀬も押し迫り、職場や取引先との忘年会が行われるシーズンだ。会の趣旨はお互いの労をねぎらうことだが、その実態は上司や先輩に対する若手社員の接待だ。その振る舞いにもルールがあり、「ビールは片手でお酌をしてはダメ」「ラベルが上になるように右手でビンを持って、左手を添えて注ぐ」といった常識がある。
これにはさらなる「ワンランク上の注ぎ術」があるとして、12月10日の週プレNEWSが「ビールの正しい注ぎ方」を取り上げている。ビジネスマナーに詳しいコラムニストの後田良輔氏によると、ビールを注ぐ前に行うべき大事なことがあるという。それは、白いハンカチで瓶の汗を拭うことだ。
「あなたのためなら自分の持ち物を犠牲にする」忠誠心をアピール
記事の写真にはお酌を受ける年輩の上司が映り、「上司は意外と気にしている『飲み会』での部下の行動」というキャプションがついている。仕事でもないのに、なぜそんなことを気にしているのだろうか。しかし後田氏は、自信満々にこう勧める。
「ビールを注ぐ前に、そのハンカチで瓶に付着した水滴を拭い、上司のスーツが濡れるのを防ぐというパフォーマンスを行ないましょう。ホテルマン並みの気遣いが評価されるはずです」
プロのサービスマンでもないのに、そこまでやるかと感じるが、「やりすぎなようではあるが、必ず一目置かれるマナー」とのことだ。ハンカチは他にも、ビールを注ぐときに誤ってこぼしてしまったときにも一役買う。
店のおしぼりではなく自分のハンカチで拭くことによって、「『あなたのためなら自分の持ち物を犠牲にしても構わない』という忠誠心」をアピールできるというわけだ。そのため、「ハンカチは必需品です」と語っている。
また、後田氏によると「ビールをお注ぎします」と声をかけるタイミングは「グラスの残りが6割程度」になったときが良いとのこと。早すぎる感じもするが、この時点であれば他に声をかけるライバルもおらず先手必勝になるという。
「仕事中の『報・連・相』と一緒で、ビール注ぎも早ければ早いほどいい。過剰なくらいのほうが丁寧な印象を与えられます!」
「クソつまらない忘年会」はいつか身を助けるのか?
この記事を読んだ人からは、予想通り違和感を訴える声が多くあがっている。通常のビールの注ぎ方の「常識」でも鬱陶しいというのに、さらなるマナーを求められたらたまらないということだろう。
「下らなさ過ぎる。ぜひ廃れてほしい文化」
「こんなこと要求されんなら、行かねーよバーカ!」
「そんなんじゃないでしょ、上司よ。ビールの注ぎ方とかどーでもよくねーか?みるとこ間違ってねーか?残念すぐる…」
注ぎ方で味がおいしくなるならともかく、相手に優越感を与えるために卑屈な態度を取っているかどうかを確認されているとすれば、非生産的というしかない。
その一方で、やはりビールの注ぎ方は大事だという人もいる。20代ビジネスパーソン向けサイト「日刊キャリアトレック」には、たのっちこと田野幸伸氏が「クソつまらない忘年会はいつかキミの身を助ける」というコラムを寄稿している
若いころは「忘年会なんてなくなればいいのに」「てめえらに酌するために会社に入ったんじゃねえぞ」と思っていたが、28歳になってTV番組の大御所との宴会に出席し「ビールの正しい注ぎ方を教わっておいてよかったな」と感じたという。
予定が空いているのに忘年会を欠席したことのある人は約半数
この記事には「なかなか面白い」「たしかにこれはあるかなあ」と評価する反応があるが、やはりその一方で「クソくだらない記事」という反発や、「正しいと思うけど、典型的なオッサンの小言過ぎてw」と揶揄するコメントも見られる
クリエイティブサーベイの調査によると、職場関連の忘年会に誘われて予定が空いていたにもかかわらず「自らの意思で欠席した経験がある人」は49.8%と約半数にものぼっている。その理由には1位の「お金がかかるから」(47.7%)に次いで「上司への配慮に気疲れするから」(42.2%)が2位にあがっており、マナーに煩わしさを感じている人はやはり多いようだ。
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