近畿大学(大阪府東大阪市)が9月14日から「保護者用ポータルサイト」の運用を開始した。学生の時間割や授業の出欠状況、成績について、保護者がPCやスマートフォンを使ってリアルタイムで把握できるものだ。
このしくみを12月14日付け読売新聞が紹介したことから、ネットで話題になっている。記事では52歳の母親が「私が家を出る時はまだ寝ていて、(子どもが)大学に行っているか心配。出席状況が分かるのは助かる」と評価する声を紹介している。
「留年されると困る親」には助かるしくみなのか?
また記事によると、ポータルサイトは開設から2週間で約1400件の利用があり、大学広報部も「長期欠席などの情報を共有し、連携して対応できる」とメリットをあげている。同様の取り組みは、神奈川工科大でも実施しているという。
しかし大学生ともなれば、親からの自立が求められる年頃だ。ネットでも、大学生の半分は成人していることもあり、親がそこまで監視するのは過干渉だという意見が多い。
「いくら何でも過保護過ぎませんかね」
「大学生にもなって保護者に授業出てるか心配されるとか幼稚園児かよ」
「窮屈すぎる。大学なんて出席日数計算して上手にサボればいい」
その一方で、真面目な学生からは確認されても問題ないとし、「いいと思うよこのシステム」と評価する声もある。学費を負担する保護者の視点に立って、子どもがきちんと大学に通っているか確認する手段を持つことは「当然のこと」と賛同する意見もある。
「私立大で一人暮らしで全仕送りだったりしたら4年間で1千万円はかかるし、出資者であり保護者である親が知る権利はあるよなぁと思ったんだけど」
「留年されると経済的な理由で困るという親にとっては助かるのかな…?」
このほか「親が何とか卒業させたいって大学にゴネるのが原因」という鋭い意見も。確かに親が何と言おうとも、授業に出ない学生を卒業させることはできない。大学とすれば、普段から情報公開をしていれば「親にも責任がある」と突っぱねることができるわけだ。
「就職後も出勤を監視するのかな?」という揶揄も
ただし気になるのは、最近の保護者が子どもの行動に干渉したがるのは、大学生活だけではないということだ。例えば企業は就職活動に際して「保護者向け会社説明会」を開催するところが増えている。
いくら学生に内定を出しても、親の反対があればすぐに辞退してしまうため、親への説明が入社のカギとなるからだ。母親が賛成しても父親が反対すれば辞退につながるケースもあり、採用担当者は内定承諾の電話を受けるときに「ご両親の確認をもらいましたか?」と尋ねることも。いまでは「オヤカク」という就活用語にもなっている。
このような背景から、今後は社会人向けの「保護者用ポータルサイト」が作られるはめになるのでは、という声まであがっている。
「就職後も出勤してるかどうか監視するのかな?」
「『子どもの出勤状況把握したい』とか出てくるよ。一人でいる時間を失い、自分で判断し、その結果に責任とることからどんどん離れていく感じがする」
少子化によって「自分の子どもは失敗させたくない」という親の気持ちがあるのかもしれない。しかし親は子より先に世を去るもの。失敗の責任を自分自身に負わせる機会をつくることも、子どもの成長に欠かせないのではないだろうか。
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