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シリーズ歴代作品の興収との比較から見る、『007 スペクター』の真価

2015年12月16日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

SPECTRE (c)2015 Danjaq, MGM, CPII. SPECTRE, 007 Gun Logo and related James Bond Trademarks, TM Danjaq. All Rights Reserved.

 今週金曜公開の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』とのバッティングを避けるためか、期待の新作の公開が続いている。先々週末の5作品に続いて、先週末は『orange オレンジ』『母と暮らせば』『仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦ジェネシス』の3作品が上位に初登場。中でも好調なのが土屋太鳳&山﨑賢人主演の『orange オレンジ』だ。全国303スクリーンで公開、土日2日間で動員26万1779人、興収3億1177万8900円で堂々初登場1位。この初動の数字は今年20億超えをしたティーン向け実写日本映画『ビリギャル』『ヒロイン失格』『ストロボ・エッジ』を大きく上回るもので、原作の人気に加えて、朝ドラ『まれ』でも夫婦役を演じていた主演2人に集客力があることを証明した。

参考:http://realsound.jp/movie/2015/12/post-608.html


 今回注目したいのは先々週末の1位から2位に後退した『007 スペクター』の成績。先週末の動員は20万3,256人、興収2億8,197万8,800円。累計動員数は114万410人、累計興収15億2,478万1,800円。大規模な先行上映の数字が上乗せされてはいるが、この時点でちょうど3年前の同時期(12月の頭)に公開された『スカイフォール』の動員を約25万人上回っている。


 90年代からしばらく日本では興収10億台をうろうろしていた『007』シリーズだったが、ダニエル・クレイグが初めてボンドを演じた『カジノ・ロワイヤル』は興収22.1億と久々の大ヒット。続く『慰めの報酬』も作品の評価は奮わなかったもののギリギリ20億円台にのっかっている。実はアメリカをはじめとする海外のほとんどの国では、その『慰めの報酬』と続く『スカイフォール』の間で興収が2倍近くに跳ね上がるという現象が起こったのだが、日本での『スカイフォール』の興収は27.5億にとどまっている。往年の人気シリーズとしての完全復活を印象付けた『スカイフォール』だったが、相対的には「日本ではもっと大ヒットしてもよかった」と言える作品だったのだ。

 『007』のように50年以上にも及ぶシリーズの場合、歴代作品の興収との比較はインフレ率を勘案しなければならないのだが、それでも全世界興収において『スカイフォール』は、ショーン・コネリー時代の『サンダーボール作戦』(1965年)と『ゴールドフィンガー』(1964年)に次ぐ歴代トップ3に入る記録と言われている。そしてまさに今、そのトップ3の牙城を『スペクター』が崩そうとしているのだ。バーバラ・ブロッコリ&マイケル・G・ウィルソンの製作チームが「次作もダニエル・クレイグで!」と切望しているのも当然のことだろう。(文=宇野維正)