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丸本莉子が“初のラブソング”に込めた気持ち「恋愛の矛盾みたいなものを歌いたかった」

2015年12月15日 21:51  リアルサウンド

リアルサウンド

写真=池田真理

 シンガーソングライターの丸本莉子が、12月16日に配信シングルとして3作目となる「つなぐもの」をリリースする。これまで“応援ソング”を展開してきた彼女だが、今作は上京直前に書かれたというラブソング。恋愛中の言葉にしにくい葛藤や矛盾が、彼女らしい真摯な視点で描かれている。ミュージックビデオでは、non-no専属モデルの佐谷戸ミナが出演し、ストーリー性のある映像で話題に。またカップリングでは、高知県「2016奥四万十博」のテーマソング「がんばる乙女~Happy smile again~」を聴くことができる、今回のインタビューでは、着実に活動の幅を広げている現況から、シンガーソングライターとして変わらない思いまで、じっくりと語ってくれた。(編集部)


・「言葉にしたいけど、言葉にならない……そんな気持ちを表現したかった」


ーーメジャーデビューから半年が経ちました。


丸本莉子(以下、丸本):そうですね。高校二年生のときに音楽活動を始めて以来、ずっとメジャーデビューを目標にやっていたんですけど、今はメジャーデビューしてからが、また始まりなんだなって思っていて。スタッフさんも増えたし、もっともっと頑張らなきゃって思っています。


ーー9月に1stミニアルバム『ココロ予報~雨のち晴れ~』をリリースしましたが、早くも3rd配信シングル「つなぐもの」がリリースされます。


丸本:結構早いペースで出させてもらっています(笑)。


ーーアートワークも曲調も、これまでよりもグッと大人びたものになっています。


丸本:そうですね。メジャーで出すなかでは、今回が初めてのラブソングになるんですよね。9月に出したミニアルバムにも、完全なラブソングっていうのは入っていなかったと思うので。いわゆる“応援ソング”というか、背中を押すような曲が多かったと思うんですよね。まあ、前回の配信シングル「やさしいうた」は、とらえ方によってはラブソングでしたけど、ここまで“女の子”っていう感じのラブソングは、今回が初めてだと思います。だから、こういうビジュアルになったのかな(笑)。


ーー(笑)。ラブソングをこれまであまり書いてこなかったのはどうしてですか。


丸本:高校生のときは、たくさん書いていたんですけど……上京してからは、全然書いてなかったですね。こっちに来てからは、地域のテーマソングとかを作らせてもらうことが、多かったりしたので。


ーー地域のテーマソングはどんな経緯で作るようになったんですか。


丸本:私が所属している事務所が、地域活性化プロジェクトっていうのをやっていて。そうやって地域を元気にしていこうっていう活動のなかで、私も歌で貢献できたらなって思っていて。そういう活動を、3年間インディーズでやっていたんですよね。だから、東京に来てからは、いわゆる“応援ソング”みたいなものを作ることが多かったのかもしれないです。


ーーなるほど。


丸本:まあ、もともと自分が歌っていたレパートリーのなかに、ラブソングが結構あったから、それで作ってなかったっていうのもあるとは思うんですけど。むしろ、アップテンポなものを作ることに、自分の興味が向いていたというか。


ーー今回の「つなぐもの」は、それこそ上京する前からあった曲だとか?


丸本:そうですね。上京するギリギリ前、二十歳の頃に作った曲です。でも、当時のものとは、ちょっと歌詞を変えています。今の言葉使いというか、25歳の今の言葉使いに、歌詞を直したりしました。たとえば、「あたし」っていう言葉を全部「わたし」に直したり。言葉使いを、ちょっときれいにしたんですよね。


ーーもともとは、どんな思いのもとに作った曲だったのですか?


丸本:ラブラブな曲とか失恋の曲とかって、結構世の中に溢れていると思うんですけど、つきあっていて、ちょっと倦怠期になったときの曲って、あんまり無い気がして……そういうものを表現したかったんですよね。


ーーというと?


丸本:歌詞で言ったら、最初に〈言葉にしないと伝わらなくて〉って歌っているんですけど、最後は〈言葉にはならない〉って歌っていて。そういう矛盾みたいなものを歌いたかったんです。恋愛っていうのは、やっぱり自分が思っている通りにはいかないというか、言葉にしたいけど、言葉にならない……そんな気持ちを表現したかったんですよね。


ーーなるほど。


丸本:そういうことって、普段の会話で言葉にするのは、すごく難しいと思うんですよね。もし言ったとしても、言われたほうは、ちょっと重いと感じるかもしれないし。でも、こういう想いっていうのは、好きになればなるほどあると私は思っていて……それを歌に乗せることによって、重さが軽減するというか、何かちゃんと表現できるんじゃないかなって思ったんですよね。


・「つなぐものがあるからこそやっていける」


ーーそういう曲を、このタイミングでリリースすることには、何か理由があるのですか?


丸本:自分のなかでは、ずっと好きな曲のひとつだったというのと、あと、今のレコード会社のプロデューサーさんが、いちばん気に入ってくださったのが、この「つなぐもの」という曲だったんですよね。それで、「いつかこの曲をシングルとして出したいね」って言ってくださっていて。それが今回、ようやく実現したという。


ーーなるほど。メジャーでラブソングを出すのは今回が初ということですが、そのレコーディングも、やはりこれまでとはちょっと違ったのではないですか?


丸本:そうですね。ちょっと大変でしたね(笑)。感情の部分は――私は少女漫画とか好きで、友だちとよく恋バナとかもするんですけど、そういう意味では結構共感してもらえる歌詞なんじゃないかっていうのは思っていて。この曲って、たぶん片思いの人でも、すごいラブラブな人でも、最近ちょっとうまくいってない人でも、何かしらあてはまるところがある気がするんですよね。そういう部分で共感してもらえたらいいなって思っていて。だから私も、特定の誰かを思い浮かべながら歌うというよりは、「こういう思いをしたよな」って思いながら歌いましたね。


ーー「つなぐもの」っていうタイトルは、最初に書いたときと同じなんですか。


丸本:もともと漢字だったのをひらがなに直しました。で、一番の歌詞はあまり変わってなくて……切ない感じというか、たとえつきあっていても、ふとしたことで不安になるという。つきあっていても、すぐに別れることはできるし、それはたとえ結婚していても同じだと思うんですよね。結婚していても、離婚届を出せば、それで終わりなわけで。そういうなかで“つなぐもの”っていうのは何だろうっていうことを考えて、二番の歌詞で、だんだん前向きになっていくというか。そういう感じになるよう歌詞を書いたし、歌い方もそうしたつもりなんですよね。


ーーせつないラブソングではありつつも、最終的には心持ち前向きというか。


丸本:なんとなくハッピーエンドで終わりたかったというか。つなぐものがあるからこそやっていけるみたいな感じで、ちょっと前向きな歌詞になっているので。だから、最初はちょっと悲しめに歌って、どんどん明るくなっていくっていうのは、レコーディングのときに意識しましたね。


ーーなるほど。この曲のミュージック・ビデオを観ると、その感じがさらに分かるような気がします。


丸本:そうですね。今回のミュージック・ビデオは、ちょっとストーリー仕立てになっていて。佐谷戸ミナちゃんっていうnon-no専属モデルの方に出演していただいているんですけど、彼女が「人と人とをつないでいる見えないはずの絆の糸が見えてしまう」女性を演じているんです。彼女が朝目覚めて、自分の指に結ばれた糸を辿って外に探しに行くと、いろいろな人々をつないでいる糸が見えるっていう。恋愛に特化せず、家族であったりとか、友だちであったり、広い部分での「つなぐもの」っていうのが、このミュージック・ビデオでは表現されているんですよね。


・「感じたことを曲にして、どんどん作って、そして歌っていきたい」


ーーそんな「つなぐもの」とは打ってかわって、カップリングの「がんばる乙女~Happy smile again~」は、かなりはっちゃけたアップテンポの曲になっていますね。


丸本:はい(笑)。これは一年半ぐらい前に、先ほど言った地域活性化プロジェクトの関係で高知に行く機会があって……私、ホントに高知県が大好きになってしまったんですよね。かつおとか食べ物がすごく美味しいし、現地の方々の人柄も本当に良くて。お酒もやっぱり美味しいですし。あと、初めて訪れた次の日ぐらいに桂浜に行ったんですけど、そこに神秘的なものを感じて、すごく元気をもらったんですよね。で、それから高知県に5回ぐらい行って……要は、高知県のファンになってしまったんですよ(笑)。


ーー(笑)。それがどんなふうに、この曲と繋がってゆくのですか?


丸本:そうやって「高知県が好き」っていうことを話していたら、高知県としても、いわゆる“女子旅”みたいなものを、もっと力を入れてやっていきたいっていう話になって……それで、私が高知を旅して思ったことを歌にしてみたんですよね。で、来年に「2016奥四万十博」っていうのがあって、そこでいろんなイベントが繰り広げられるんですけど、そのテーマソングにしてもらえることになって。それで歌詞も具体的に奥四万十の景色をイメージしたものに、ちょっと変えたりとかして。で、今回、私が高知県観光特使に認定していただいたタイミングで、ちょうどカップリング曲になったという感じです。


ーー丸本さんの曲のなかでも、かなりアップテンポな曲というか、相当はっちゃけた曲になっていますよね。


丸本:なんか高知県って、行くとすごく癒されるんですけど、何かすごくアクティヴな感じにもなるんですよね。そういう感じを曲のなかでも出したいなと思って。元気になる感じの曲というか。


ーー確かに、元気のある歌になっていますよね。〈Highになって/輪になって/さぁ旅に出よう〉という歌詞もあるし。


丸本:そうですね。何かストレスが発散できる場所が高知県だと思うので、そういう感じの曲にしました(笑)。


ーーそう考えると、今回のシングルは、なかなか対照的な二曲になりましたよね。


丸本:確かに(笑)。私自身、バラードは大好きなんですけど、ライブとかでバラードばっかりだと、やっぱり飽きちゃうじゃないですか。なので、こういうアップテンポなものも作りたいなっていうのは思っていたんですよね。ただ、アップテンポにせよバラードにせよ、曲を作るときはいつも、マイナスなことをプラスに変えるような、プラスなことはもっともっとプラスになるような感じにしたいなっていうのを心掛けていて。そこはやっぱり変えたくないなって思っているんですよね。


ーー以前のインタビューでも同じようなことを言っていましたが、そこは変わらない部分なんですね。


丸本:私は小説とか漫画が好きなんですけど、そうやって起承転結のついた曲を作りたいっていうのは思っていて。その物語を潜り抜けることによって、心持ち気分が明るくなるというか。あと、普段は見落としてしまう当たり前のことでも、歌にすることでハッと気づかされたりすることってあるじゃないですか。そうやって何か気持ちがプラスになればいいなっていう思いは、やっぱりずっと変わらずあるんですよね。


ーーなるほど。デビューイヤ―もそろそろ終わりに近づいていますが、来年はどんな一年にしたいですか?


丸本:来年もシングルとアルバムを出せるように頑張りたいと思います。今、曲をめっちゃ作りたいんですよね(笑)。だけど、それがなかなか追いついていないので……今ワンマンでやっている曲は、もう入らないよっていうくらい新曲を作りたいですし、来年はまた、来年感じたことを曲にして、どんどん作って、そして歌っていきたいと思っています。


(取材・文=麦倉正樹)