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中孝介、NHK みんなのうた「目をとじても」再放送 “地上で、最も優しい歌声”で歌う両親への思い

2015年12月15日 21:51  リアルサウンド

リアルサウンド

中孝介『目をとじても』

 『NHK みんなのうた』2015年10月-11月放送曲だった中孝介の「目をとじても」が、視聴者からの数多くのリクエストを受け、12月から再放送されている。


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 「目をとじても」は、作詞にいしわたり淳治、作曲にKiroroの玉城千春が参加したバラードナンバー。編曲とピアノ演奏には同じくKiroroの金城綾乃が加わり、聴く者に切なくも温かい郷愁を抱かせる楽曲に仕上がっている。


 この歌の軸になっているのは、幼い頃の両親との思い出だ。大人になって改めて気付く、父親、母親のありがたさ、注いでもらった愛情、そして、<わたしは/あなたの愛で/出来ている>という実感を抒情的に描いたこの曲は、世代を超え、幅広く支持される普遍的なメッセージを備えている。「目をとじても」について中孝介は「どんなに背いたとしても、いつも優しい眼差しで見つめてくれる。そんな大きな愛を受けながら僕たちは生きて来たし、これからも生きていられるのだと思います」というコメントを寄せているが、この曲を聴けば、その切実な思いが彼の歌声のなかに生々しく反映されていることがわかるだろう。


 イラストレーター、アニメーターとして活躍する松永千保氏が手がけた『みんなのうた』の映像も秀逸だ。主人公は、都会に出て、居酒屋でバイトをしながら役者を志している女性。夢と現実に挟まれながら生活する彼女の心の支えになっているのは、掛け替えのない両親との思い出——。ロトスコープアニメーションの手法を用いたリアルな動きとノスタルジックなタッチは、「目をとじても」の奥深い魅力をしっかり際立たせている。映像と楽曲のマッチングの良さは視聴者の大きな反響を呼び、中孝介のもとには「画と歌がとてもあっていて涙がでてきた。もう会えなくなった人が思い浮かぶ」「将来、娘もこんな風に私たちのことを思ってくれる日が来れば、としみじみ思った」などといった声が、男女問わず、様々な年代の方から寄せられているという。聴き手それぞれの経験と自然に重なり、ひとりひとりの心のなかで異なる物語が広がっているのも、この曲が幅広く支持されている理由だろう。


 そして言うまでもなく、「目をとじても」の魅力の中心にあるのは、中孝介の歌そのものだ。奄美大島の民謡をルーツとする、独特のコブシ回しとファルセットがもたらす響きは、“なつかしゃ”という言葉に象徴される。奄美の方言である“なつかしゃ”は、“懐かしい”という意味だけではなく、心が動かされたときに使われる言葉。愛する人を思ったとき、故郷の両親に思いを馳せたとき、素晴らしい風景や音楽に出会ったときの心の揺れを示す言葉であり、それは中孝介の歌声の力に直結している。彼の歌が台湾、中国をはじめアジア全域でも支持されているのは、彼の声に内包された“なつかしゃ”の感覚が言語・国境を超えて伝わっているからだろう。


 「目をとじても」のヒット、『みんなのうた』での再放送によって、中孝介の歌の魅力はさらに幅広い層に伝播していくはず。「地上で、最も優しい歌声」と称される彼の歌、そこで生まれる心の揺れをじっくりと感じてほしいと思う。(森朋之)