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『紅白歌合戦』近藤真彦と松田聖子がトリ内定? 彼らに託された“番組の変革”を読み解く

2015年12月15日 21:51  リアルサウンド

リアルサウンド

『紅白歌合戦』公式HP

 近藤真彦と松田聖子が、12月31日に放送される『NHK紅白歌合戦』のトリに内定したことが報道された。


 実現した場合、松田は2年連続、近藤は初めてのトリ。ともにデビューから35周年の記念イヤーを彩ることになる。


 80年代からトップアイドルとして走り続けてきた2人がこのタイミングでトリを務める意義とは何だろうか。『社会は笑う・増補版』や『紅白歌合戦と日本人』の著者である太田省一氏はこう解説する。


「『紅白歌合戦』の盛り上がりは、戦後の高度経済成長とともにあり、そこには常に演歌がありました。そしてその象徴は、1963年に初出場し、以降一度は途切れながらもほぼ毎年出演を続け、通算のトリ回数も史上最多の北島三郎だったといえるでしょう。しかし、2013年の『紅白歌合戦』をもって自ら「引退」を宣言したことで、“紅白=演歌”というイメージに一旦区切りがついたように思いきます。一方、この年は『あまちゃん』の特別企画で、天野春子役の小泉今日子と鈴鹿ひろ美を演じた薬師丸ひろ子が『潮騒のメモリー』をリレー形式で歌いました。この年以降、80年代アイドル・アーティストが演出の中心となり、翌2014年も薬師丸ひろ子が正式に初出場、中森明菜が12年ぶりに紅白で歌唱、松田聖子が初めて大トリを務めるなど、毎年トピックが増えており、今回もその流れで松田聖子とマッチがトリを務めるのだと思われます」


 また、視聴者のメイン層が移り変わったのもこのタイミングであると同氏は続ける。


「いまやメインの視聴者層も、マッチや松田の年代に近く、いまや家庭を構えたりしながらテレビを見る40代から50代の方に移り変わってきていると思います。その人たちが自分の若かったころで懐かしいと思えるのは、演歌よりも80年代アイドルではないでしょうか。今井美樹やX JAPANなど、J-POP、ロック系のアーティストも彼らの青春時代に流行した音楽です。そのなかで、松田は80年代から結婚・出産を経てもなおアイドルとして君臨し続けたパイオニア的存在で、最近では娘の神田沙也加とデュエットした年もありながら、2014年にようやくトリを掴みました。マッチも、80年代以降ジャニーズ勢が紅白歌合戦に常連として出場するようになる大きなきっかけを作ったひとりなので、今回35年目にして初めてつかむであろうトリは、彼にとってひとつの到達点といえるかもしれません」


 続けて、同氏は『紅白歌合戦』の選出方法が変化し始めていると指摘した。


「先述の『あまちゃん』や2014年のサザンオールスターズ・中森明菜、今年の小林幸子のように、近年の『紅白歌合戦』は特別企画枠へ力を入れる傾向にあります。また、出演者の選出に関しても、かつてはその年にヒットを出したアーティストを選び、その後継続して出演している歌手が勝ち上がり的に出順を後ろに下げていく形でしたが、近年は節目を迎えるアーティストがその年限りというかたちで出演することが増えています。よりスペシャル感や企画性を重視した番組作りへと変化しているといえますね」


 最後に、同氏は今後のトリをめぐるキャスティングをこう予測する。


「これまでの歴史を振り返ると、SMAPや嵐など、ジャニーズ勢がトリを務めることはあっても、女性グループアイドルがトリを務めたことはありませんでした。ただ、今後はその可能性も否定できません。AKB48のように、朝ドラ主題歌に抜擢されたアイドルもいるので、今後期待したいですね。また、80年代アイドルをはじめとしたアイドル重視の最近のトレンドを踏まえれば、この先しばらく白組のトリはジャニーズ勢が中心に務めるのではないかと思います。そんななかで、ジャニーズ以外のアーティストがどう登場してくるのかにも注目したいです」


 変革期を迎える『紅白歌合戦』が、今後どのような時代やアーティストにフォーカスを当てるのか。引き続き注目していきたい。(向原康太)