先日のノーベル賞授賞式でも世界的に存在感を示したスウェーデン。教育費や医療費がほぼ無料、基礎年金は日本の倍という「高福祉国家」だが、国民負担率70%という高い税が課せられ、100万円稼いでも70万円は税金にとられてしまう。
12月14日放送のテレビ東京「未来世紀ジパング」は、北欧の理想郷と呼ばれるスウェーデンが直面する問題を取り上げた。番組ゲストでスウェーデン出身のモデル、カミラさんは複雑な胸のうちを明かす。
「(教育が無料なので)貧しい家に生まれても、将来成功するチャンスはある。けど、働かない人たちも国からお金をもらえるので、アンフェアだと思う」
申請を待つ難民にも月3万円が支給される「理想郷」
とはいえ見方を変えれば、働けない状態になっても安心して暮らせる国だ。そんな理想郷を目指し、いま多くの難民がスウェーデンに押し寄せている。
スウェーデンは難民受け入れに寛容な国で、ヨーロッパにおける2015年の難民受け入れ数は、ドイツの約80万人に次ぐ第2位だ。昨年の8万人に対して、今年1年間だけで約19万人の難民を受け入れている。
難民たちは申請が認められる数か月の間、移民局の宿泊施設で寝泊まりする。2段ベッドで8人部屋の、狭いが清潔感のある住居だ。洗面用具やタオルなど生活に必要な一式をもらい、申請中でも毎月約3万円が支給される。スマホを持っている人もいて、当面の生活に不自由はなさそうだった。
もともと国民の5人に1人が移民、または2世という土壌もあり、難民政策は国をあげて行われてきた。難民認定された人たちは、大人も子供もまず学校で言葉を習得する。授業料はすべて政府が負担し、社会に適応できるようサポートする。
驚くことに難民の子どもたちも、大学まで学費は一切かからない。小学校の校長は「スウェーデンでは分け隔てなくしっかりとした教育を受けられます」と誇らしげに語る。
政策見直しを発表する副首相の目に涙
手厚い保護を受けた元難民たちは、社会の担い手になっていた。老人養護施設で介護士として働く20歳の女性は「この仕事はやりがいがあって大好きです」と笑う。
53歳の男性介護士も「この仕事に満足しているし、幸せです」と語った。いまや介護士の4人に1人は元難民だという。
一見順調に見えるが、スウェーデン政府は先月末に難民政策の見直しを発表した。発表に立ったアサ・ロムソン副首相の声は震え、唇をかんで涙をこらえていた。
一番の理由は、予算不足だ。今年だけで8000億円以上もかけており、このままではいくらあっても足りない。いままではすぐに永住権を与えていたが、教育なども受けられるビザの発給も停止したという。高い理想はあるものの、想定よりも多すぎた難民に対して苦渋の決断をしたのだ。
ジャーナリストの竹田圭吾氏は、受け入れ後のサポート態勢のクオリティーを維持するなら、数を制限するのは「ひたすら受け入れ続けるより、よっぽど責任がある態度だと思う」と理解を示していた。
核廃棄物の最終処理場建設に住民の8割が「賛成」
またスウェーデンは世界中が頭を痛める核廃棄物の問題でも、世界に先駆けて最終処分場の建設を開始した。建設地となった地域の住民投票では、約8割の住民が建設に賛成したという。住民たちはこう語る。
「必ずどこかが受け入れなければならないから」
「問題を先送りしたところで、解決できない。孫たちのためにも、私たちが決めなければならなかったの」
番組の今回のタイトルは「北欧スウェーデン"理想の国"は本当か!?」だったので、冒頭のカミラさんの不満発言を受けて、スウェーデンの闇が垣間見えるのかと思いきや、あまり掘り下げなかったのが少し期待はずれだった。
もっとも、闇はないのかもしれない。「理想を持ちつつ現実問題に責任を持って対処するスウェーデン人は素晴らしい。先送り体質の日本人は見習うべき」という結論は事実だろう。人口1000万人足らずの国のやり方を日本がマネできるとも思わないが、やはり共感してしまうのだった。(ライター:okei)
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