2015年12月15日 12:11 弁護士ドットコム
「See you」ポスターに描かれたドナルドは、背中を向け、寂しそうに手を振っていたーー。業績が低迷する日本マクドナルドは、経営再建策として、年内100店舗をめどとする大量閉鎖に踏み切った。閉鎖された店舗の中には、東京都港区の赤坂見附店などの大型店舗も含まれている。
【関連記事:OLの「キャバクラ副業」も続々発覚?「マイナンバー大不況」は本当にやってくるのか】
報道によると、飲食業界では、マクドナルドの元店舗を狙った動きが本格化しているという。前のオーナーが残した設備をそのまま使える「居抜き物件」として、注目されているのだ。バーガーキングの村尾泰幸社長は、FNNの取材に対し、「そのまま使うと工事費が安くなる。たとえば、ダクトのシステムであったり、空調設備だったり、トータルで工事コストが安くなります」とメリットを語っている。
「居抜き」の話は、飲食業界などでよく聞くが、税金も含めてどんなメリット、デメリットがあるのだろうか。山本邦人税理士に聞いた。
「居抜き物件は、工事コストを抑えられることのほかにも、いろいろメリットがありますよ。
まず、工事期間が短縮され、開店までの期間を短くすることができ、利益の逸失を防ぐことができます。また、出店までの期間の家賃負担も抑えることができます。場合によっては、机や椅子などの備品、厨房機器、内装、外装なども譲り受けることがあります。それらを準備する手間も省くことができるでしょう。
さらに、閉鎖した店舗が大手のチェーンの場合は、立地調査をしている可能性もありますので、立地として悪くないかもしれません。また、閉鎖した店舗と同じ業種であれば、前の店舗の顧客を取り込めることもあるでしょう。
中古で譲り受けた造作や設備などは、減価償却の耐用年数が短く設定されるので、短期間で費用化が可能になり、開店初期の法人税や所得税を節税する効果があります」
デメリットは、ないのだろうか。
「そういうわけではありません。デメリットも多いのです。
まず、前の店舗が閉鎖したということは、あまり立地が良くないという可能性があります。また、店内のレイアウト変更がしにくいかもしれません。厨房やトイレなど水回りの位置は変更するのが難しいので、動線などが悪くても、そのまま利用せざるを得ません。さらに、新店舗が必要とするだけの電気、ガス、水道などの量がまかなわれていない可能性があります。
設備代込みで譲り受けをした場合には、設備の故障リスクを負う必要があります。なにより、閉鎖した店舗への悪いイメージが残ったままになってしまうことも考えられます。
このようにしてみると、デメリットは取り返しのつかないことが多いですね。居抜き物件を利用するのであれば、契約前にこれらのリスクをよく確認しておきましょう。そして、投資額の早期回収を目指したいところです」
山本税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
山本 邦人(やまもと・くにと)税理士
監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、2005年に独立。現在は中小企業を中心に160件を超えるクライアントの財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。
事務所名:山本公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://accg.jp
(弁護士ドットコムニュース)