ソフトバンクが現在行っている人型ロボットPepperの短期アルバイト派遣事業を、来年夏から全国に拡大する。時給は全国一律の1500円。安倍政権が最低賃金1000円を目指す中で、ロボットが人間より高い金をもらえるのかとネット上で話題を呼んでいる。
Pepperの派遣事業は、今年7月にスタート。23区内の事業所に派遣し、ティッシュ配りや受付などをするというもので、これまで毎月平均で20件の受注があったという。
さらに23区外への派遣を要望する声が多く、まずは12月18日から埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、広島県、福岡県、熊本県、鹿児島県、沖縄県にサービス範囲を拡大する。2016年夏には全国で展開する予定だ。
沖縄県の最低賃金なら「生身の人間が2人雇える」
必要経費はPepperの時給1500円のほか、サポート技術者の時給1500円、それに1台あたり原則3万円の移送費がかかる。
今回サービス拡大の対象となった沖縄県の最低賃金は693円。Pepperの「人件費」だけでも、生身の人間が2人雇える計算になる。そのためネット上では「俺より時給高くてワロタ」といった声が相次いだ。
「1500円も貰えない底辺もいるんですよ」「ディストピア感ある」
「ティッシュ配りの職を奪われたフリーターがPepperを打ち壊すという21世紀のラッダイト運動はまだですか」
高い時給は「キャラに対する出演料みたいなもんだから」と、タレント扱いをする人も。「人間を時給800円ぐらいで雇って、ペッパーのコスプレさせた方が安くね?」と悔し紛れに書き込む人もいた。
そんなPepperの実力は、いかほどのものなのだろうか。ソフトバンクグループ広報によると、これまで百貨店などの商業施設や証券会社のセミナーでティッシュ配りに従事した経験がある。「人間が配った方が効率がいい」という見方もあるが、担当者は、
「人が普通に配るよりも、立ち止まって受け取ってくれるケースが多かったようです」
と語り、その人気振りがうかがえる。企業での受付業務も経験済みだといい、かなりオールラウンドに活躍できるようだ。
現時点では「設計上、薄いチラシは配れない」弱点も残る
ただ、そんなPepperにも弱点がある。ティッシュは配れるが、紙などの薄いものは配れないというのだ。
「Pepperは200グラムぐらいまでのものを持つことができるのですが、設計上薄いものは難しい。なので、パンフレットやチラシを配ったりすることはできません」(同社広報)
少なくともチラシ配りの分野においては、まだ人間の方が有利ということのようだ。ちなみに、野村総合研究所と英オックスフォード大学が共同で行った研究によると、10~20年後には日本の労働人口の49%が人口知能やロボットに代替可能になるという。
代替可能性が高い職種としては、ビル清掃員やスーパー店員、銀行窓口係といった比較的単純で、細部までルールで定められている仕事が挙げられていた。「ティッシュ配り」もここに入る可能性が高いだろう。
一方で代替可能性が低い職種としては、アロマセラピストや保育士、マンガ家などの仕事が挙げられている。ただ、人工知能やロボット技術がこのまま進化を続ければ、創造性や協調性が必要な仕事も将来ロボットが担う可能性が高い。そのとき人間は、苦痛な労働から解放されるのか、それとも気の毒な失業者が街に溢れることになるのだろうか。
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