2015年12月14日 06:41 弁護士ドットコム
配偶者の浮気が発覚。それも社内不倫だと知ったら、いくら「別れる」と言い張られても、信用するのは難しそうです。中には「相手が退職すれば、問題は解決するのではないか・・・」と思う方もいるでしょう。だからといって、浮気相手に「退職しろ」と迫る行為に、法的な問題はないのでしょうか。
既婚女性と不倫していた男性から、「彼女の夫が突然会社に乗り込んできて、『会社を辞めて妻から離れろ』と言ってきました。要求に応じるべきなのでしょうか?」と弁護士ドットコムの法律相談コーナーに質問を寄せました。
澤藤 亮介弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. 嫌がらせ」も行き過ぎれば犯罪になることも。
本件のような不倫の場合、不倫された夫は、妻の不倫相手「個人」に対し、妻との不貞行為を原因とする慰謝料請求を行い、夫として被った精神的損害を慰謝料という「金銭」で償うよう求めることが、法律上の本来あるべき形です。
そのような観点から今回のケースをみると、不倫相手の夫の行動は正攻法から外れているといえます。
ご相談者は、「不倫相手の夫が突然会社に乗り込んできた」と言っています。仮に今後、毎日のように会社に乗り込んできたり、一日に何度も電話をかけてくるなど、ご相談者や勤務先への「嫌がらせ」がエスカレートした場合、その方法や回数によっては、民事上の不法行為にあたる可能性があります。
また、嫌がらせは、刑法上の「犯罪」にあたる場合もあります。
嫌がらせの程度が、ご相談者や勤務先の業務を妨害するほどであれば「業務妨害罪」に問われる可能性があります。
また、勤務先に乗り込んで上司に害悪を告知(脅迫)し、上司やご相談者にむりやり面会や謝罪をさせれば、強要罪に問われるかもしれません。
では、ご相談者は、不倫相手の夫の要求通り、会社を辞める必要があるのでしょうか。
さきほど述べたとおり、今回のような不倫トラブルは、法律上は、不倫相手の夫との「慰謝料」の問題に尽きます。
不倫の事実を知った勤務先が、懲戒処分として解雇する可能性もありますが、不倫を理由に解雇するかどうかについて、判例は基本的に慎重な立場です。
不倫はあくまで「私生活上の問題」であって、「原則として懲戒の対象とはならない」という判断が多く見られます。
たとえ、不倫相手の夫との慰謝料をめぐる裁判でご相談者が敗訴したとしても、裁判所からご相談者に対して「会社を辞めろ」との判決が出ることはありません。
勤務先が解雇処分を行わない限りは、ご相談者は、不倫相手の夫の要求に従って会社を辞める必要はないでしょう。
【取材協力弁護士】
澤藤 亮介(さわふじ・りょうすけ)弁護士
東京弁護士会所属。離婚、不倫問題、労働問題などを中心に取り扱う。iPad、iPhoneなどのデバイス好きが高じ、事務所内の事件資料や書籍の全面データ化等、ITをフル活用して業務の効率化を図っている。日経BP社『iPadで行こう!』などにも寄稿。
事務所名:新宿キーウェスト法律事務所
事務所URL:http://www.keywest-law.com/