2015年12月13日 11:51 弁護士ドットコム
世界最大のSNSサイト「フェイスブック」の共同創業者で、最高経営責任者であるマーク・ザッカーバーグ氏がこのほど、妻と共に保有する時価総額450億ドル(約5兆5000億円)の株式のほぼすべてを慈善事業に寄付する考えを明らかにした。
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ザッカーバーグ氏は12月1日、自身のフェイスブックページで、長女が誕生したことを報告。そのうえで、健康や教育などの分野の慈善活動を支援する団体を設立したことを発表した。さらに、「世界のすべての子どものために小さな役割を果たす」として、妻と共に保有しているフェイスブックの株式の99%を慈善事業に寄付するとした。
ザッカーバーグ氏の寄付については、インターネット上で賞賛の声があがる一方、税金対策ではないかという指摘もある。もし、日本で慈善活動に寄付する場合、税金はどうなるのだろうか。何らかの優遇措置があったりするのだろうか。近藤学税理士に聞いた。
「日米で寄付金税制を比較した場合、所得控除率に極端に大きな差はないようですが、異なるのは対象となる寄付金の範囲です」
近藤税理士はこう切り出した。ザッカーバーグ氏は、自ら設立した慈善団体へ寄付すると報じられているが、日本だったら、どうなるのだろうか。
「日本の場合、控除の対象となる寄付先は、国や都道府県、政府が指定した公益法人やNPOに限定されています。今回のように自ら設立した慈善団体への寄付を控除対象とするのは難しいのではないかと思います。
ちなみに、年間所得10億円の人が、今話題の『ふるさと納税』を行った場合、全額控除となる寄付金の限度額は4400万円ほどになります」
日本には、個人による寄付の文化が根付いていないという指摘もある。
「寄付金税制は、持てるものから持たざるものへの所得の再分配を意図したものです。アメリカは『民』、日本は『公』の意志で分配を行うところに違いがあります。そのため結果的に、個人の寄付金総額は日米で約100倍の差があるといわれています。
旧約聖書には『十分の一税』という考え方があり、所得の1割は寄付するという文化が欧米にはあるようです」
一方で、日本も、江戸時代においては、大阪の約200の橋のうち『ご公儀』が作った橋は12だけで、残りはすべて商人の寄付で架けられたといわれています。このことから、日本人に寄付の文化がないとはいえないと思います」
今回のザッカーバーグ氏の寄付について、どのように評価するのか。
「ネット上でも書かれていますが、ザッカーバーグ氏の娘さんが将来、納税することになるであろう多額の相続税やその他の節税対策という側面ももちろんあると考えられます。
それを差し引いても、自らのアイデアで得た富を世のために役立てようとする志は立派だと思います」
近藤税理士はこのように話していた。
【取材協力税理士】
近藤 学 (こんどう・まなぶ)税理士
京都府郊外で税理士事務所を開業。社長の正しい経営判断をサポートする財務プロフェッショナルの会、資金繰り予報士®こがねむしクラブ主催。
著書: 『一番楽しい!会計の本』(ダイヤモンド社)
翻訳書:『あなたの中の起業家を呼び起こせ!』(マイケル・E・ガーバー著)
事務所名 : 近藤学税理士事務所
URL http://koganemushi.jp
(弁護士ドットコムニュース)