2015年12月11日 06:51 弁護士ドットコム
不倫男の常套句「妻とは別れる」。その言葉を信じて不倫にどっぷり浸かっている女性は珍しくないようです。
しかし、「私のことが奥さんにバレたら、あっさり捨てられました。不仲だと言っていたのに・・・」「奥さんとは別居しているはずが、しっかり同居していました」といった相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、数多く寄せられています。
「騙されていたようなものだから、せめて慰謝料請求はしたい!」という女性たちの言い分は、法的に認められるのでしょうか。濵門俊也弁護士に詳細な解説をしていただきました。
A. 請求は認められず、逆に慰謝料請求される可能性あり
お気持ちは察するに余りありますが、慰謝料請求をしても、裁判所は認めてくれないでしょう。さらに、相談者の女性は、慰謝料を「請求する」立場ではなく、「請求される」立場であることも、お伝えしたいと思います。
なぜ、そのような結論になるのか、詳しくご説明していきます。 不倫関係で、女性が相手の男性に慰謝料を請求できるのは、男性が、妻子があることを徹底的に隠したケースですね。つまり、女性は相手を独身男性と認識して、通常の男女交際と同じような感覚で、交際をした場合です。
そして、女性に「結婚してほしい」などとささやき、女性も、当然その男性は独身であると信じ、「結婚してほしい」という言葉を受け入れたとします。このような場合には、「婚約」の成立が認められる可能性もあります。そのため、男性に妻子がいることが発覚した際には、女性から男性に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。
しかし、今回のご相談者の方は、相手が婚姻状態にあることを認識しておられたわけですね。「相手が妻子持ちと分かっていた」とのことですから、不倫関係と認識した上で、自らの意思で関係を続けていたことになります。
仮に相手の男性から「離婚するかも」「離婚したら一緒になってくれる?」などの甘言があったとしても、不倫関係との認識があった以上、婚約の成立が認められるとは到底思えません。したがって、相談者からの慰謝料請求は認められないでしょう。
それどころか、相談者の女性は、不倫相手の男性に復讐するどころか、逆に男性の奥さまから、慰謝料請求をされる可能性もあります。
よく誤解されていますが、離婚しなくても、配偶者の不倫相手に対して、慰謝料請求することができます。また、慰謝料請求を配偶者に対してではなく、不倫相手のみを相手どることも可能です。
過去の判例でも、離婚調停において、妻が夫に対し、不貞行為に基づく慰謝料の支払を免除したケースでも、不貞行為の相手方に対し債務を免除する意思を含むものではないとしたものがあります。
この判例では、不倫の相手方に対し、慰謝料として認定した三百万円の支払を最高裁判所が命じました(最判一九九四年十一月二十四日民集一七三号四三一頁)。 このように、奥さまが相談者の女性に慰謝料請求することは可能です。ご注意ください。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:http://www.hamakado-law.jp/