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WaTのふたりは「解散」をこう語ったーー10周年記念ライブ詳細レポート

2015年12月08日 14:41  リアルサウンド

リアルサウンド

写真=堀田芳香

 ウエンツ瑛士と小池徹平による、シンガー・ソングライターデュオWaTが、メジャー・デビュー10周年記念のライブ「WaT 10th Anniversary Live 2015」を開催した。


 WaTとしては2008年の日比谷野外音楽堂以来となるライブとあって、会場となった品川ステラボールはこの日を待ちわびたファンの熱気に満ちている。ふたりが登場するや、「WaT、お帰り!」という声や、ふたりの名前のコールがあちらこちらからあがって、1曲目の「青春の輝き」を大歓声で包む歓喜の幕開けとなった。ふたりともさわやかな白い衣装だったが、ウエンツがMCで「いつもなら、WaTの白いほうウエンツ瑛士ですと自己紹介するんですけど――ふたりとも、白い!」と言ってフロアを沸かせ、そして「君が僕にKissをした」、「reStart」で、ふたりのハーモニーを響かせていく。続く「僕らの居場所」は、椅子に腰を掛けて弾き語りとなったが、椅子が準備されているときには、「あれ、今日静かじゃない? お客さん3人だったっけと思った」(ウエンツ)、「ストリートライブの最初の頃を思い出すね」(小池)と観客に語りかける。ひさしぶりのWaTのステージゆえ、観客には感慨深いものがあるのだろう。ふたりの動作や、言葉、歌を一時も見逃すまいとする、いい緊張感があった。「久しぶりのWaTですが、待っていてくれてありがとう」と観客に笑顔を見せる小池に、「え、それだけ!? じゃあ俺がいろいろ質問するよ、朝何時に起きた? 昨日は何時に寝たの?」とウエンツが小池に喋らせようとグイグイと攻めていく。そんなやりとりに、フロアからも問いかけやツッコミが飛んできたりと、ライブ中盤にはフレンドリーな温かさが広がっていった。ちなみにウエンツは前日、緊張で眠れなかったらしい。


 「卒業TIME」からはじまった後半は、躍動的でアッパーな曲が揃った。それぞれのソロ・パートに「徹平!」「えいちゃん!」と掛け声があがり、ダンサブルなロック・チューン「Hava Rava」はハンドクラップと歓声が一段と大きくなった。「僕のキモチ」では、観客をあおりながらシンガロングを誘って、会場を一体化させた。


 「今日は2回公演で時間も短いので、いろんな曲をお届けしたいと思ってMCも少なく、一気にガーっとやってきたので驚いたと思うんですが」とウエンツが切り出し、「2016年の2月に新曲をリリースするのですが、そのリリースを以てWaTは解散となります」と続けた。突然の報告に冗談と思ったのか、悲鳴の中で「ほんとなの?」という声も上がったが、涙を見せその決断を語るウエンツと、彼が言葉を詰まらせたのを引き継いで小池がこれがふたりで前向きに決断したものであることなど、自分自身の思いを口にした。2008年のライブ以降、それぞれの活動をし、自分と向き合う時間と、さまざまな仕事や作品と出会うなかでこの先についてより明確に考えたこと、10周年という節目のライブでこういう報告をすることを申し訳なく思っていると語り、真摯に今の思いを伝えようとするふたりの言葉を、観客はじっと聞き入っていた。すすり泣く声も多く聞こえたが、ちゃんと自分たちの思いを伝えたいというふたりの姿勢は観客にも伝わっているように見えた。


 最後に披露した新曲(タイトル未定)は、そのWaTの今とこれまでとこれからを凝縮した曲となっていた。その歌詞に耳を寄せて、「これからも応援するよ」、「ありがとう」という声を上げた観客からは、複雑な気持ちを抱えながらもふたりを明るく送り出そうという気丈なファン心もうかがえた。


 アンコールでは、短い時間にもたくさんの曲を聴いてほしいと、初めての試みである7曲のメドレーを披露した。曲中では「まさかこのなかに、『TOKIMEKI☆DooBeeDoo』が入ると思わなかったでしょ?」(ウエンツ)という選曲もあり、バラエティに富んだ内容になった。ふたりで「コーヒーで胃が痛くなるくらい、ルノアールでめちゃくちゃ考えた」というこのパート。解散発表後のアンコールということで、いつもよりもかなり力を必要とする状況だったと思うが、ふたりでアコースティック・ギターをかき鳴らしたり、あるいはハンドマイクでステージ上を闊歩しながら歌ったり、小池がハープを奏でたりと、最後まで華やかなメドレーとなった。そして最後に、「あの日」で締めくくり、名残惜しそうにステージを後にした今回のライブ。2016年2月10日に今回披露した新曲を含めたアルバム『卒業BEST』をリリースし、翌日11日のイベントでWaTとしての活動を終了するふたり。ファンにとっては複雑な思いもあるかもしれないが、今回のステージは、デビューから10年分の笑顔と涙が入り混じった、とても大事なライブとなった。


 終演後の取材に応えたふたりは、「前の晩は、ライブの曲順を振り返りながら、今日のステージがどういう景色なるのか、このステージに立った時にどういう感情になるのか、いろいろ思い返していたら眠れなくなってしまった」、「解散という話をした後でのアンコールでも、いい空気を作ってくれるファンのみなさんには感謝しています」とウエンツが語り、小池は「最初の、お帰りという言葉が突き刺さった」と言いながらも、「急な話にも関わらず、ふたりの話を最後まで聴いてくれたことがありがたい。これからのそれぞれの活動でもまた、思いを返していきたい」と感謝の言葉を伝えていた。(文=吉羽さおり)