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10人に1人の高齢者うつ病、認知症に間違えられやすい

2015年12月07日 18:30  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

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落ち込んでいるのか、虫の居所が悪いだけなのか、それとも病気なのか。「高齢者うつ」は身体の不調に隠れたり、認知症と判別が難しいため見逃されやすい。 「高齢者うつ病の有病率は、おおむね10%前後。10人に1人以上の高齢者はうつ病になっているわけですから、決して他人事ではありません。平成23年の厚生労働省の調査では、65歳以上の患者数は約28万人で、うつ病患者全体の29%。男性と女性の比率は1対2・5となり、圧倒的に女性のほうがかかりやすいです」 順天堂越谷病院メンタルクリニックの馬場元准教授は、『高齢者うつ』の広がりをこう説明する。『老後破産』や『下流老人』『買い物難民』など、高齢者の生きにくさを示す言葉が時折、メディアを騒がせるが、今度は『高齢者うつ』。 一般的にうつを疑うサインとなるのは次のような症状だ。 「悲しくて憂うつ。何ごとにも興味がわかない。意欲や集中力の低下。寝つきが悪く朝早く目覚める。不安感がぬぐえず考えが堂々めぐりをする。夕方よりも朝方のほうが調子が悪いなどです」(馬場准教授) 高齢者の場合は症状が多様で落ち込む以外の症状が見られることも多いという。いちばん多いのは『心気症状』。 「例えば、身体へのこだわりが非常に強くなり、便秘ひとつで大腸がんの心配をし続ける。脈が少し上がると心臓の病気を気にして鼓動が頭から離れなくなる。イライラして落ち着かなくなるんです。自律神経症状が目立ち、睡眠や食欲など生理機能が低下したり、過剰な罪悪感や焦燥感を抱くことも高齢者うつの特徴です」(馬場准教授) 2、3思い当たる節がある高齢者はきっと少なくない。 「高齢者自身や周囲の人の頭に“うつ”かも、とはまず浮かびません。認知症に間違えられることもあります」 そう指摘するのは、ストレスケア日比谷クリニックの酒井和夫院長だ。 「若い人のうつと比べて厄介なのは、うつとともに身体の衰弱が進むことです。食欲不振や不眠症状は、生命の危機にもつながりやすい。希望を失った高齢者が、前触れなく確実な方法で自殺するケースも少なくありません」 深刻になる前に手を打つ重要性を訴える。