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誤った「自己分析信仰」が就活生を不安に追い詰める 視線を外側に向けて情報を集めよう

2015年12月07日 17:00  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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この時期になると、「自己分析」に取り組み始める大学3年生もいるでしょう。しかし就活には、自己分析など本来は必要ありません。そんなことをしても多くの学生は「売り込める強みなんてないよ」「俺はこの3年間、何をしていたんだろう」と気が滅入るだけなのです。

「私って過去にこんなに実績を出してきて、いろんな能力を持っているんだ!」と元気になる人は非常にまれです。就活生を不安に陥らせて自己啓発セミナーに導く悪質業者もいますので、この手のサービスとの付き合い方には十分注意すべきです。(文:河合浩司)

社会経験の乏しい学生が「得意なこと」を探しても行き詰る

もしも自己分析の目的があるとすれば「自分の就業観を深めること」です。具体的な志望企業や職種を考える前に「自分にとって仕事とは何か」「何のために働くのか」「どんな仕事をしたいのか」といったことを整理する準備作業です。

しかし、しばしば本やセミナーで誤って教えられるのは、自己分析は「企業に対する自己PR」のために「自分には何ができるのか」「得意なことは何か」を掘り下げるためというもの。これでは学生は困ってしまいます。

それは当然でしょう。社会経験の乏しい学生が「自分にできること」を考えても、思いつかないのは当たり前。世の中にどんな仕事があってどんなスキルが必要なのかを知らない若者が、思いつく仕事などたかが知れています。人生経験の浅い学生がいくら自分の過去や内面を掘り下げていっても、採用担当者を納得させる答えは出てきません。

最悪なのは、浅い自己分析で導き出された結論に引っ張られて、志望企業などを絞りすぎることです。ただ何となく大手有名企業に入りたい人が、そのことを無理に理屈づけるために「人の笑顔が好き」「人のためになりたい」というのがオチなのです。

「業界」や「職種」の視点で自分なりに調べを進める

そんなことよりも、いまは「どんな仕事をしたいのか」を軽く書き出したら、視線を外に向けましょう。その業界はどの程度の規模なのか、今後成長の見込みはあるのか。業界内にはどんな会社があって、それぞれどんな特徴があるのか等々について調べましょう。

「職種」の視点での情報収集もお勧めできます。例えば「マーケッター」という職種はどんな仕事で、どんなスキルが必要なのか。今後は「就社」ではなく「就職」意識で自分のキャリアを考え、労働市場での評価を高めないと生き残れない時代になるかもしれません。

結果に惑わされると危ないものが、もう一つあります。それは大学で実施する「適職検査」の類いです。これはナビサイトの営業マンが学校に対して売り込むものですが、キャリアの授業で紹介されることがあるので、学生さんたちは有料でも自然と受けているようです。

しかし前述の理由で、これも自身の適職が分かるとは限りません。これらの自己分析はハマってしまうと、やればやるほど不安になります。そして不安に駆られた就活生を、就職支援塾や自己啓発セミナーなどがねらっています。

「友人を勧誘したら紹介料を払う」セミナーには応じるな

私が知っている事例でも、初めは無料のセミナーから始まり、次に入門の4~5万円の有料セミナー。仕上げには20~30万もするようなセミナーまで引っ張ろうとしてきます。挙句の果てには、「友人を勧誘したら紹介料を払う」というものまであります。

「セミナーに勧誘できたら、営業力がある証として面接の自己PRにも使える。だから、ここでその力を磨くのだ!」

という意味不明な言い分があるようです。しかし採用担当者の観点では、友人をお金に変える人を採用したいとは微塵も思いません。面接でこの話をされたら「友人を売った人」として不合格の判断をします。ブラック企業なら大歓迎されるかもしれませんが…。

有料サービスに申し込むときには、社会経験がある人に相談してみましょう。そんなことより、今は同じ就活生として、友人たちと「どんな仕事がしたい?」と語り合う時間を大事にすべきです。

腹を割って話せる相手がいて、初めて言語化するものもあるでしょうし、自分と異なる意見を聞くことも刺激にもなります。話し込むうちに「自分にとって仕事とは何か?」といった人生観に関わることも考えがまとまってくると思います。

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