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HKT48と氣志團のコラボはなぜ絵になるのか “建前の突破”と“キャラクター性”から考える

2015年12月07日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

HKT48 feat.氣志團『しぇからしか!』

参考:2015年11月23日~2015年11月29日のCDシングル週間ランキング(2015年12月07日付)(ORICON STYLE)


 オリコンのリンクを踏んだ瞬間に飛び込んでくる「カラフルな色調(比喩ではなく実際の見た目として)」のチャート。主な原因は、多数ランクインしているアニメやゲームの派生作品。3位は『ラブライブ!』、6位は『アイドルマスター』、8位と9位は『あんさんぶるスターズ!』のキャラクターが歌う楽曲が収められたシングルである。恥ずかしながらこちらのジャンルには全く土地勘がないためどういった層にリーチしているのか皆目見当がつかないが、アニメファン・ゲームファンの作品へのロイヤリティーの高さが如実に表れている今週のチャートは「いわゆる『オタクカルチャー』が音楽文化も飲み込もうとしている」という意味でとても2015年的な匂いを感じる。


 ちなみに今週のチャートを見たときに「6位以降全部こういうジャンルか・・・?」と一瞬勘違いしたがそんなことはなくて、7位の『FAMILY PARTY』はビジュアル系バンドの己龍、Royz、コドモドラゴンによる合同シングル、10位の『DREAMERS’PARADISE』はLDHからの派生ユニットのシングルだった。どちらもアニメ作品に負けない色鮮やかなアートワークを採用しているが、こういったデザインの方が店頭での訴求力が強いのかな?なんてことも気になった。


 さて、本稿で取り上げるのは1位となったHKT48 feat.氣志團の『しぇからしか!』。同日発売のラブ・クレッシェンド『コップの中の木漏れ日』(2位)との48グループ内対決を制したこの曲は、ドラマ『マジすか学園』のスピンオフ企画の主題歌となっている。これまでもこのドラマシリーズの新作に合わせて“不良、ヤンキー”をテーマにした楽曲がAKB48名義で発表されてきたが、今作ではHKT48がその流れを踏襲したことに加えて“ヤンキーの先輩”とも言える氣志團を召喚。すでにいくつかの歌番組へもこの組み合わせで出演を果たしているが、華のある2つのグループがステージ上で並び立っているのはなかなか絵になる(氣志團の代表曲「One Night Carnival」を想起させる振り付けもある)。


 「2つのグループがステージ上で並び立つ」とさらっと書いたが、ここで立ち止まって考えたいのは「男性との接触を制限されている女性アイドルが男性ロックバンドと共演していて、それについて取り立てて誰もなんとも思っていなさそう」ということである。特に今回の曲のPVには指原莉乃と綾小路翔のキスシーンまであるが、それすら『ミュージックステーション』においてはトークのネタとして処理されていた。“恋愛禁止”が金科玉条となっている昨今のアイドルシーンの流れで考えるとなかなか奇妙な状況である。


 ここについては“恋愛禁止”という「建前」を自らの実績(および自らの失敗)で形骸化させた指原莉乃の立ち位置によるところが大きいが、綾小路翔があくまでも「ヤンキーというものを戯画的に演じているキャラクターとしての存在」であることも重要なポイントである。たとえばこれがフェスシーンの真ん中にいるような若手ロックバンドとのコラボであれば、もっと大きな「騒ぎ」になっていたかもしれない。


 「恋愛禁止という建前の突破」と「女性アイドルとキャラクターとしての男性アーティストの絡み」。この2つの構造は、「一夫多妻制」を標榜してステージ上でいちゃいちゃしまくる清竜人25のあり方と実は一致している。奇しくも先日の「指原カイワイズ」に出演していた清竜人25に対して、指原は「絶対に人気が出ると思う」「今日でファンになった」とコメントしていた。「しぇからしか!」が昨年末からアイドルシーンを賑わせているコンセプトのトレースになっているのは偶然だろうか、それとも…。(レジー)