人材派遣業界では、長らく「時短で働きたい主婦を派遣で生かすのは無理」とされていたという。そんな常識を打ち破ろうとしているのが、主婦専用求人サイト「しゅふJOB」を運営しているビースタイルという会社だ。
各社に眠っている「主婦が可能な仕事・働き方」を開拓し、主婦と結びつけるマッチングサービスを展開している。12月3日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)は、この会社で社長を務める三原邦彦社長をゲストに迎えて話を聞いていた。
企業も「週3日でも能力発揮してもらえればメリット」
「しゅふJOB」は一都三県を中心に1万件以上の求人掲載を誇り、「週2~3日勤務で、数時間働きたい」という子育て中の主婦たちの人気を集めている。高いスキルを生かす仕事なら、時給2000円以上も珍しくないという。
ある会社では、フルタイム週5日の仕事を4人の主婦で分担している。たとえば主婦の池田さんは、週2日で10時から16時まで勤務。そして16時になると主婦の小林さんが引継ぎ、18時まで仕事を続けている。
ビースタイルが提案した、働ける時間をパズルのように組み合わせる手法だ。このサイトが仕事探しの支援になったという主婦は「今の会社に出会わせてくれ、自分を有効活用できる場を提供してくれたのがすごく嬉しい」と語る。
ある老舗醤油メーカーは、大手酒造メーカーで開発経験がある主婦を、開発専門スタッフとして雇うことができたと喜んでいる。
「高額所得の人材を雇うのは、我々中小零細には難しいことです。週3日であれ能力を発揮していただければ、私たちには大きなメリットです」
ビースタイルの三原社長がこのビジネスを起こしたきっかけは、勤めていた大手人材派遣会社での経験だった。ある日、英語も流暢で秘書経験もある優秀な同僚が、出産で退職し、週3日のパートでスーパーのレジ打ちをしていることを知る。
村上龍は「雇用革命」という言葉で称賛
主婦が働くことの現実を始めて知った三原社長は、起業の理由をこう語る。
「出産をして子どもを生み育てることは、とても素晴らしいことだと思うんですよ。その素晴らしいこと自体が、女性の足かせになったり、自己表現を奪われてしまうことって、とても残念じゃないですか」
2002年に起業した三原社長は、条件が複雑な主婦たちから働ける時間を詳細に聞きだし、主婦をどう使えばいいか分からない企業をしらみつぶしに回り、働き方を提案してきた。大企業の社長には「手紙を書きまくった」という。
さらに、企業内の仕事状況を分析するシステム「コンパス」を開発し、主婦が活躍できる場を生み出した。いまや三井住友海上あいおい生命など大手企業をはじめとする4000社が利用し、のべ4万人が就業している。
三原社長の努力は、週5日フルタイムという枠組みを壊せなかった日本の働き方に一石を投じるものだ。村上龍はこれを「雇用革命」という言葉で称賛した。
「少子高齢化で労働力が減るなか、良い意味で女性は資源なわけですよね。その資源を生かすってことは、雇用革命だと思いますよ」
育児や介護を担う男性の悩みにも応えるのでは
女性のキャリアを生かしつつ、家庭との両立をかなえる働き方を開拓した三原社長の地道な努力が素晴らしい。しかしこれだけだと、結局主婦は短時間労働で非正規雇用・低賃金のままでよしとする空気を増長しかねない。
そんな懸念に答えるように、三原社長は4月に設立した新会社シフトで、出産後も女性が働きつづけられて、仕事と家庭の両立がしやすい企業「ホワイトアロー企業」の選定と公表を行っているという。
また、このような働き方は女性だけでなく、育児や介護を担う男性の悩みにも応えることになるだろう。様々な働き方の可能性を見出したこの取り組みは、すべて時代の要求にかなうものだと思う。
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