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MCバトル番組「フリースタイルダンジョン」が激アツい! 王者参戦の神展開にヒップホップファン大注目

2015年12月05日 18:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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ラップのフリースタイルバトルをテーマにした番組「フリースタイルダンジョン」(テレビ朝日系)がここ最近話題となっている。

フリースタイルバトルとは簡単に説明すると、交互に即興のラップを披露して優劣を競うというものなんだけど、いかんせん即興なので言葉選びのセンスやリズム感が重要となる。たまに相手をディスって動揺を誘う手法を取り入れるも良し、真っ向勝負、スキルで勝負するも良し。非常に白熱するバトルだ。

「フリースタイルダンジョン」では、即興ラップに自信のある若者が、番組が用意した5人の大物ラッパーに挑み、勝ち抜くごとに賞金をゲットしていく。11月25日の放送回なんかは、9月の番組スタート以来、最高の盛り上がりを見せた回だった。

なんせ今年デビューしたばかりで、現在はアルバイトと並行して音楽活動を行っている若手ラッパーの焚巻(たくまき)が、番組側の4人の大物ラッパーを撃破した末に、ついにあの男と直接対決する機会を得たのだから。(文:松本ミゾレ)

ヒップホップ界のカリスマ、般若が7年ぶりにバトルに登場

実は僕、RHYMESTERといったジャパニーズヒップホップの黎明期から活躍するユニットを長年追いかけているんだけど、その中でも、とりわけ般若という男は、特にリスペクトし続けてきた。その般若が、「フリースタイルダンジョン」最後の刺客として登場すると聞いたときは、耳を疑ったもんだ。

恐らくその道を極めようとする人間の中で、彼を知らない者はいない。メディアにはあまり露出しないが、その理由は簡単。世論や風潮をぶった切るスタイルのアーティストの中でも、特にセンシティブな戦争や民族、LGBTなどをテーマにした作品を発表してきたからだ。

一方で楽曲のバラエティは多岐にわたり、自身が登場するMVではコミカルな演技を見せることも多いため、幅広い世代にファンがいる。

そんな般若がフリースタイルで戦うのは、なんと公の場では7年ぶり。それだけに僕も、25日放送回を観るまでは、期待と不安に駆られる日々を送っていた。が、やっぱり般若は般若だった。

まさに格闘技!食らいつく若手!蹴り飛ばすキング

勝負は8小節2ターン制の3ラウンド勝負で、2本先取すれば勝ちとなる。しかし、たとえ1ラウンド目であっても5人の審査員全員の判定がどちらかに一致すればクリティカルヒットとなり、その瞬間に勝負が決まる。

焚巻は得意の早口高速ラップを武器に、これまでの4勝負全てでクリティカルヒットをぶち込み、勝ちをもぎ取ってきた。番組史上最強のチャレンジャーだが、恐ろしいことに般若を相手にしても初っ端からクリティカルを狙いに出ている。

先攻の焚巻が、怒涛の勢いで繰り出す言葉の応酬。並みのラッパーならこれだけで戦意を失うだろうが、なんせ相手は般若。喉元に噛み付こうとする獣を、拳で殴りつけるかのようにねじ伏せる。第1ラウンドが終了した途端、オーディエンスから大歓声があがる。

般若の腕は錆び付いておらず、それどころかさらにパワーアップしていた。ここでは審査員5人中4人が般若の勝利と判定する。

つづく第2ラウンドでは二人の紡ぐ言葉はさらにヒートアップする。しかしそれは先ほどのようにお互いをディスるようなものではない。とんでもないスピードで相手の力量を把握し、互いに勝負への熱量を問い確かめるかのような戦い。こんなに熱いバトルを見るのは何年ぶりだろうか。

判定は5人中、3人が焚巻の勝利と判定。勝負は最終ラウンドまで持ち越されることとなった。

「勝ち負けそんな関係ねぇから お前のライム早く聞かせてくれ!」

最終ラウンド、これ正直僕のような時間をかけて何回も言葉を修正できる立場の人間がどうこう言う話ではないかも知れない。フリースタイルの勝負というのは、毎度出たとこ勝負。頭の回転と語彙だけが武器になる。

だから誰もあらかじめ言葉を用意しておくというダサい真似はしないし、状況によって用意した台本も通用しなくなるので、結局頼りになるのは尋常じゃない瞬発力だけ。

焚巻は実力は十分示したが、まだまだ駆け出しだ。だからこそ大物を打ち破り実力を示し、名声を手にしようとする。その強烈な衝動は最終局面でも言葉の奔流となって般若を覆うんだけど、般若もそれをディスったりせずに真っ向から受け止める。

目の前の若者の繰り出す上等なフロウに頷き、自分のターンになれば一変して容赦のないフロウと、ライムと、フックで本物の実力を見せつける。

たとえば1ターン目後攻での般若の「勝ち負けそんな関係ねぇから お前のライム早く聞かせてくれ!」という熱烈な要求。これに応じる焚巻の「這いつくばりながら奥歯食いしばって 時にボコボコにへっこまされるよ毎夜毎晩」というフレーズに、場内は熱狂に包まれる。未だバイトで食い繋ぎながら音楽活動をしている現状を一瞬の判断で重ねて出した、渾身のラップだ。

ところが般若もラウンドの最後に畳み掛ける。

「そんなもん知らねえ場数がどうとか そんなもん知らねえ誰がチャンピオン素人とか 俺がナンバーワン 俺がオンリーワン ヒップホップドリーム 突くぜ核心」

焚巻の激アツなあがきに釘を刺し、ここで完璧にチャンピオンの勝利を確信させてくる。若い焚巻の無尽蔵の熱さが、王者の風格をかなぐり捨てた般若の7年分の熱さで消し飛んだ瞬間だ。

敗れはしたが才能豊かな焚巻の将来に期待

しかも、この最終ラウンドで使用している楽曲は番組MC、ZEEBRAの「Street Dreams」を流用しているんだけど、短いバトルの時間で曲のテーマとラップをダブらせることも忘れない。これだけされればもう脱帽するほかない! 結果的にはこの最終ラウンドで般若がクリティカルヒットを打ち出し、焚巻を倒すこととなった。

だが焚巻は、自分のターンでも口にしていた通り、ボコボコにされても何度でも立ち上がる男のようだ。敗れた後も目のギラつきは衰えていなかった。

そもそも才能があるので、彼は今後絶対大物になるはず。今回は般若に食い下がった上で敗れたけど、いつかまたリマッチを挑む姿が見たいし、その姿が想像できるほどの逸材に感じられた。引き続き「フリースタイルダンジョン」をチェックしていきたい。

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