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今年の「新語・流行語大賞」は政治色が強く見えてしまう理由

2015年12月05日 18:10  週刊女性PRIME

週刊女性PRIME

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12月1日、新語・流行語大賞が発表になった。 年間大賞は「爆買い」と「トリプルスリー」。今年はきっと、難航した年なんだろうなと推測する。 流行語が豊作な年だなあ……と思う年がある。なんかなあと思う年もあるわけだが、そんな年にだって必ず新語・流行語はあるにはあるのだ。 皆さんはご存知だろうか? 候補語は『現代用語の基礎知識』の読者アンケートで募る。だいたい、9月から10月。だから、基本的に10月以降に流行った言葉があるとしても、候補にならない。今年でいえば「びっくりぽん!」なんていうのもそうだろう。逆に、その年の上半期に流行っていたものでも、10月の時点で勢いがなくなっていれば候補にあがらない。 読者のアンケートから上位100語を整理して、「日本新語・流行語大賞」の候補50語がノミネートされる。最初に一般読者が選んでくれた新語・流行語の候補ありきだ。そこから7人の選考委員によって、年間大賞、トップテンが選ばれるのだ。選考委員はジャーナリストの鳥越俊太郎さん、東大名誉教授の姜尚中さん、女優の室井滋さん、歌人の俵万智さん、漫画家のやくみつるさん、クリエイティブディレクターの筋内道彦さんと『現代用語の基礎知識』の清水均編集長だ。 選考委員は7~8年で交代する。このメンバーになって4年目。 「今年の大賞はなんかなあ……」。そう思った方も多かったと聞く。 もちろん、過去にも不作だった年はあった。 そういう年は必ずと言ってエンターテインメント部門が弱い。「安心して下さい、穿いてますよ。」「ラッスンゴレライ」「あったかいんだから」も中ヒットぐらいだったのだろう。 そんな年はちょっと暗めな印象になる。 今年は政治色が強いという指摘も受けている。 ただ、「安保法案」が民衆に大きな波となって迫っていた年だ。だから、それにまつわる新語・流行語が生まれた。「アベ政治を許さない」「SEALDs(シールズ)」「自民党、感じ悪いよね」「戦争法案」「とりま、廃案」などなど。 先ほど記したようにエンターテインメント系が弱く、他の候補語も「ドローン」や「下流老人」など、明るいイメージがあまりない。 そうなると、こういう言葉が目立ってしまったのだろう。 東日本震災後、国民もさらに積極的に政治に参加するようになった気もする。大学生たちも声を上げる。それは、無関心で選挙のときに投票率が低迷するよりもいいとは思う。そういう時代だから、そんな言葉が候補にあがっても、仕方ないのかもしれない。それが、その年を映す、まさしく新語・流行語の意なのだから。 新語・流行語を見れば、その年の世情がわかる。 ああ、こんな年だったよな、とわかるのだ。 選考委員はどんな思想、信条を持っていたとしても、そこは公正でなければならない。当たり前だ。政治色が強く見えたかもしれないが、今年はそんな年だったのだ。 最後にボクが選ぶとしたら……年間大賞は「五郎丸ポーズ」だ。 みなさんが疑問に思っていることをもうひとつ。「五郎丸」は流行語なのか否か? ボクは「五郎丸ポーズ」という言葉は立派な新語・流行語だと思う。現象自体もそうだけど、「五郎丸ポーズ」は9月からぐっとぐっと伸びた言葉だ。まさか日本のみなさんがこんなにラクビーに釘付けになるなんて、思ってもいなかった。もうしばらく続きそうである。 これは明るいニュースの流行語だから、ちょっと気分もあがる。 ボクはこの言葉を推したに違いない。 〈筆者プロフィール〉 神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari