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米倉涼子、なぜ『家政婦は見た!』が新・当たり役に? 松本清張原作ドラマとの相性から考える

2015年12月05日 16:41  リアルサウンド

リアルサウンド

『家政婦は見た!2015』公式サイト

 米倉涼子が主演を務めるスペシャルドラマ『家政婦は見た!2015』(テレビ朝日系)が、本日11月5日に放送される。同ドラマは、市原悦子が主演を務めてきた人気ドラマ『家政婦は見た!』シリーズを、米倉涼子主演で新たに制作したもので、2014年に第1回目のスペシャルが放送された際は、視聴率17.4%(関東地区ビデオリサーチ調べ)を記録する人気作となった。


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 同作に米倉涼子がキャスティングされることについて、ドラマ評論家の成馬零一氏は次のように語る。


「米倉涼子はモデルからキャリアをスタートさせた女優で、デビュー後、しばらくは当たり役に出会わなかったものの、2004年に放送された松本清張原作のドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日)が評価され、人気女優となっていきました。長身でセクシーで、しかも芯の強い女性を演じるのが得意で、海外女優でいうとアンジェリーナ・ジョリーのようなタイプといえるかもしれません。勧善懲悪モノの娯楽作品のヒロインとは特に相性が良く、そうした作品を得意とするテレビ朝日のドラマには、いまや欠かせない存在といえます。近作では、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日)の印象が強いでしょう。強くてクールな女優の代表的存在といえると思います」


 しかし本作での米倉涼子は、メガネにエプロンという地味な家政婦姿で、一見するとこれまでとは異なる印象を抱かせる。


「家族のドロドロとした内面を暴く沢口信子役は、そのルックスの面ではたしかに米倉涼子さんの新境地といえるでしょう。クールなイメージとギャップのある姿は、それだけでコスプレ的な面白さがあります。ところが、意地悪な性格の持ち主で、腹黒い一家を懲らしめるという役柄は、実は彼女のキャリアの延長線上にあるものです。もともと、松本清張原作作品でキャリアアップしてきた彼女は、ヒロインを演じるといっても、シンプルな正義だけを振りかざしてきたわけではありません。“悪をもって悪を制す”ようなやり方は、むしろ彼女の真骨頂といえます。実は『家政婦は見た!』は、『熱い空気』という松本清張の短編に登場する家政婦を主人公にして作られたドラマシリーズです。『熱い空気』は2012年に松本清張没後20年を記念して米倉涼子主演でドラマ化されていて、その成功を受けて『家政婦が見た!』は改めてリメイクされました。同じ松本清張原作作品と考えると米倉にとっては原点回帰とも言え、ようやくこの役柄にたどり着いたという印象です。今作の評判も高ければ、連続ドラマとなる可能性もあるでしょう」


 米倉版の『家政婦は見た!』は、市原悦子版の後継作品として定着していくのかもしれない。まずは今夜のスペシャルドラマで、そのダーティーヒロインぶりを堪能してみたい。(編集部)