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[Alexandros]が2015年に見せた快進撃 なぜ彼らの音楽は強い求心力を持つのか?

2015年12月05日 07:01  リアルサウンド

リアルサウンド

[Alexandros]

 2015年も残り少なくなり、各メディアでは1年を振り返る企画が催される時期になった。この1年を改めて見たとき、大きく躍進を遂げたバンドは、[Alexandros]ではないだろうか。


 彼らは2014年の武道館公演で[Champagne]から現在のバンド名へと改名し、2015年にユニバーサルミュージックとグローバル契約を締結した。以降のシングル、アルバムはともに好セールス(アルバム『ALXD』はオリコン週間アルバムチャート3位に)を叩き出し、12月2日にはシングル『Girl A』を発売。同月19日には幕張メッセでライブを行うなど、その勢いはいまもなお継続している。


 端正なルックスとステージでのロックスター然とした佇まいは以前から変わっていないとするならば、この躍進は何が起爆剤になっているのだろうか。ひとつ挙げるなら、彼らのような存在が、そして[Alexandros]の楽曲が「求められる」ようになったことだろう。


 様々なクリエイターやファッション誌・女性誌が彼らにラブコールを送り、積極的なタイアップを行っていることは柴那典氏のコラム(http://realsound.jp/2015/06/post-3599.html)に詳しいが、以降も『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』のオープニング楽曲として「Girl A」が起用され、12月4日には6月に彼らの今年を象徴する一曲である「ワタリドリ」を世の中に広めた『ミュージックステーション』への再出演も決定するなど、メディア露出の機会はここに来てさらに増えている。また、各地のロックフェスにも積極的に出演し、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015』『RUSH BALL 2015 feat. GREENS 25th Anniv.』『SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2015』などの大イベントでヘッドライナーを任されたり、代々木公園で行ったフリーライブには、約1万人の観客が集まるなど、ライブシーンにおける求心力もまた急速に高まっている。


 音楽面においても進境著しい。アルバム『ALXD』は、彼らのキャリアにおいても際立ってポップな曲をラインナップしつつ、UKロックをベースにし、転調を効果的に使って焦燥感を煽る、従来の[Alexandros]といえる「Dog 3」のような曲も収録した、絶妙にバランスの取れた一作だった。「Girl A」においても路線継続と思いきや、構成こそ「Kick&Spin」などに近いものの、「Girl A」は打ち込みのシーケンスやデジタル志向のアレンジが施された、バンドの新境地を見せるサウンドだった。歪みまくったギターと<私がいなくたって あの空が堕ちたって あなたは生き続けるだろう>と歌う川上洋平の澄んだ声が、ドラマの緊張感とマッチしていたことも印象深い。また、カップリングの「In Your Face」は、マシンビートのように正確なドラムと、ギター・プログラミングによって作られたサウンドスケープが無機質な雰囲気を作り出すムーディーなもの。新たな刺激を求めるファンを満足させる一作として、今後支持を広げていくはずだ。


 楽曲面でここまで新たな取り組みを行う背景には、さらに状況を変化させようというバンド自身の意志があるはずだ。活動を紐解いていくと、川上と磯部寛之はオーストラリアのラジオ局SBS PopAsiaで日本の音楽をレコメンドする番組『J-Rock Sessions』のDJを務めたり、バンドはアメリカの『SXSW』やイギリスの『THE GREAT ESCAPE』などに出演。「自分たちはすでに世界一であり、それを証明していく」というかねてからの目標へと着実に足を運んでいくための新機軸ではないか、と思えてくる。


 先述した12月19日の幕張メッセ公演では、一般発売前にチケットの申し込みが2万枚を超えるなど、ファンのリアクションも次第に大きくなっている。 [Alexandros]はこの大舞台で、2015年の集大成としてどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか。そして待ち受ける2016年は、ワールドワイドな活躍を見せる一年となるのか。[Alexandros]の快進撃はまだまだ続くはずだ。(文=中村拓海)