文部科学省が国立大の授業料を2031年度に93万円に値上げする試算を明らかにしたと、12月2日付の朝日新聞が報じている。この金額が実現すると、現在の授業料の標準額54万円の約1.7倍となる。
現在、国立大の運営費交付金は総額で1兆1000億円にものぼる。これを財務省が2031年度までに9800億円に圧縮する方針を示しており、減収分を授業料で賄うには大幅な値上げが必要というのだ。
「運営費交付金」の割合を私大並みに抑えろというが
財務省から交付金の削減が提案されたのは、10月26日開催の「財政制度分科会」でのこと。私立大では国からの支出が1割弱にとどまるのに対し、国立大では運営交付金(51.9%)と補助金等(15.6%)をあわせ、7割弱を占めているという現状が報告された。
そのうえで、少子化が進む中で安定的に国立大を運営するためには、運営費交付金と自己収入を同程度にすることが必要と指摘。実現にあたっては交付金を毎年1%減少させ、自己収入を1.6%増加しなければならないとした。
また、2007年以降に国立大の学生数が1.7万人減少している一方で、教職員数が2万人増加していることにも言及。学生100人あたりの教職員数が先進国の平均(7.2人)を大きく超えており(9.9人)、「規模の適正化」が必要としている。
この点について、12月1日に行われた衆議院文部科学委員会の閉会中審査で、共産党の畑野君枝委員が減収の場合の対応を改めて質問。文科省の担当官が値上げに言及した。
しかし国立大の授業料が93万円ともなれば、現在の私立大の平均約86万円よりも高くなってしまう。これでは国立大に進学する最大のメリットが失われ、経済状況が苦しい家庭の子には進学の道が絶たれてしまうかもしれない。当然ながらこのニュースには、ネットで多くの人が異を唱えている。
4割を超える私大の「入学定員割れ」をどうする
特に目に付くのが、子どもを産み育てる負担が増すために、結婚や出産にブレーキがかかってしまうという声だ。
「これじゃますます少子化だな、、子供イラネってなる。せめて国立公立大学ぐらいは頑張ればなんとかなるところであって欲しい」
「能力と意欲があっても大学に行けなくなる人が大量に出てくる社会の未来は暗い」
「困るなー。うち子供3人。。。」「無理やわ、、、国公立だけが頼りなのに」
国立大の授業料の値上げではなく、「私立への補助を全部やめて国立に注ぎ込め」「乱立してる私立の方を減らせよ」といった声も多い。試算通り値上げが行われれば、学費の安いドイツや北欧などに人材が流出するのでは、という懸念も出ていた。
政府の統計によると、国立大の数は2000~15年で99校から86校に減少する一方で、私立大は478校から604校に増加。2014年度は568の大学に2990億3862万円、1校あたり5億2647万円が支払われている。国庫負担率は低いが、総額は大きい。
なお2015年は、私立大の43.2%が「入学定員割れ」。少子化が進む中で安定的な経営が危ぶまれるが、このような大学の補助金を国立大に回せれば、単純計算で約1000億円以上の財源が確保できる計算となる。ネットにも「まずFラン潰そうよ」「国立の授業料上げる前にFラン私立の補助金無くせよ」という意見が少なくない。
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