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今宮純によるアブダビGPドライバー採点&短評

2015年12月02日 21:01  AUTOSPORT web

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最終戦のベストドライバーはニコ・ロズベルグ
今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。F1第19戦アブダビGPの週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。レース結果だけにとらわれず、3日間コース上のプレーを重視して採点する。今シーズンの最後に最高点を獲得したのは?

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☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
 強まるアンダーステアが見てとれる苦しいレースを、なんとか7位スタートから7位でまとめた。この週末、終始カーバランスに難がありながら、最終スティントをソフトタイヤで最長31周カバー。地味な展開でも、しっかり結果につなげたのが彼らしい。

☆☆ カルロス・サインツJr.
 トラブル・フリーで3日間走れたグランプリは、とても少ない。これがチームメイトとの得点差になり、年間ランク15位。ICE(エンジン本体)7基目は100%には程遠く、そんな状態で予選10位を確保。決勝11位、よく耐えてリスクマネージメントを学んだ最終戦。

☆☆ ダニエル・リカルド
 予選スピードトラップ18位でも、5番手グリッド。決勝のセクター2速度は、最速バルテリ・ボッタスに20km/h以上も劣りながら、コーナーのターンインからクリップまでが速く(10~20km/hくらいか)、それを武器にバトルに持ち込み、ヒュルケンベルグをかわした。「2015ベストコーナリング・マシン」はRB11、リカルド自身もブレーキング・スキルを見せた。直線50%のコースで6位入賞は健闘賞。

☆☆ ルイス・ハミルトン
 タイトル決定後、彼の行動や言動は、ちょっと変わったように感じる。「マシンがシンガポールから変だから」ポールポジションが獲れないと言わんばかり。最終戦でも「戦略を自由にさせてくれ」と自己主張が目立った。勝負へのこだわりとも受け取れるがチーム側は、やんわり「ノー」。これからオフの間、好きに遊ぶだろう彼に、あまりお騒がせなことはしないよう、ニキ・ラウダさんが戒めたほうがいいのでは。

☆☆☆ ジェンソン・バトン
 ここで勝利はなくとも3位3回、すべて完走しているバトン。セクター1高速コーナー、セクター3低速コーナー、どちらにも合わせこむ。予選12位は、セクター3で8位タイムをマークしたから。ボッタスを抑えきる12位は久々のマッチレース、燃費が相当厳しかったことはラップタイム推移からも容易に想像できる。

☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
 最速ラップ3位、これはレース中の“予選テスト”を彼が求めたからだ。スーパーソフトを47周目に装着。50~51周目を2分オーバーでウォームアップ(チャージラップ)にあて、52周目に1分44秒796。燃料残量は少なく、マシンは軽い状態、ちなみに予選は1分43秒187だ。こういうことをやってみようと進言するモチベーションに頭が下がる。惨憺たる1年の大締めアタック、やらずに年は越せない!

☆☆☆☆ セルジオ・ペレス
 衝撃の金曜FP2、自己ベストタイムをそろえた3位は決してフロックではない。かなりダウンフォースを削ってストレートタイムを稼ぎ、セクター3低速エリアで繊細なスライド・コントロール。意志にぴったり反応するセットアップを決めきって、今季ベストの予選4位。いつものレース重視策と異なり予選で冒険し、ビッグチームに挑む方針をとったのだろう。チーム史上最高ランク5位、決定済みだからできる。結果としてタイヤ性能劣化による5位も「冒険の証」だ。

☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
 いまさらミスを責めてもしょうがない。覆水盆に返らず。イタリアでも「こぼれたミルクを嘆いても無駄だ」と言う。予選Q1最後のアタックを中断、15番グリッドに落ちたベッテルは悔やむことなく前だけを向き、ソフト→ソフト→スーパーソフトとつなぎ、4位へ。ベストレースではなくても、次善の挽回戦を貫き、チーム全員の心を引き締めた意味は大きい。ますます赤に染まるセバスチャン、もし1年前、決断せずにレッドブルに残留していたら、いまごろは……。

☆☆☆☆☆ キミ・ライコネン
 すいすい曲がるフロントの応答性に初日から満足顔。今季ベスト2位のバーレーンGP、FP1でトップだったのを覚えているだろうか。キミは最初の走り出しが肝心なタイプ、口には出さなくても、ご機嫌な笑みが透けて見えた。予選3位、ベッテル脱落のピンチを補った。スタート後やや遅れ気味に映ったのは間隔を空けてクリーンエアでタイヤをセーブしたから、こういう駆け引きは得意。だがベッテルとポジションを入れ替えながら追うもメルセデス勢には及ばず。表彰前の控室で(最近ここの映像が、とてもオモシロイ)足を組み、くやしさをまぎらわすアイスマン。全世界の女性ファンには、たまらない場面だったのでは……。

☆☆☆☆☆ ロマン・グロージャン
 ひとまずテロは鎮圧された。パリジャンのグロージャンは、ロータスでのラストランをグリッドダウンで18番手から戦った。逆境に屈せず、9位入賞。フランスのファンも来年から“アメリカン・チーム”に加わる彼を、連帯意識を持って見守るだろう。ハースは米・仏・伊(フェラーリ)・日(小松エンジニア加入)による新勢力インターナショナルだ。

☆☆☆☆☆+ ニコ・ロズベルグ
 やっと今年最後、ニコに☆をいっぱいあげるときがきた。個人的にはチームメイトと比べて、彼が速さで大きく劣っているとは思わない。ただ、ここぞと追い込む、守りきるとき相手をつぶしてもやり抜く行動に慣れていないだけだ。そこがふたりの違い、今年もはっきりチャンピオンシップに出た。いい顔で表彰台に立つニコ、うなだれ気味のルイス、どっちがチャンピオンなのか。このアブダビGPだけを見たら、ロズベルグが王者と見間違えたはずだ。