トップへ

2PM・ジュノ主演『二十歳』が描く、男子たちの情けない恋愛模様とその魅力

2015年12月02日 19:21  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)2015 NEXT ENTERTAINMENT WORLD. All Rights Reserved.

 昨今、日本の映画、ドラマ、舞台で、いわゆるイケメンと言われる俳優が演じる役は、漫画などが原作のラブコメディのヒロインの相手役であったり、部活にあけくれる男子たちによる恋愛のない群像劇、ヤンキー群像劇などがほとんどではないだろうか。


参考:JYJのユチョン、BIGBANGのT.O.P、ZE:Aのシワン..."演技ドル"の活躍に見る韓国映画の変化


 そこに足りないものは、男子の主体的な恋愛を描いた群像劇である。こういった作品も昨今もあるにはあるのかもしれないが、例えば、今を時めくイケメン俳優が、大学で女の子に恋をする経験を通じて大人になっていく物語というのは、企画としてなかなか日本では見られないのではないか。その代わり、3人のイケメン俳優が、ツンデレな王子、癒し系王子、クール系王子などといった、三者三様の王子を演じ、ヒロインを「壁ドン」や「顎クイ」によってときめかせるという企画なら、年から年中見ることができる。また、その3人が、部活動にあけくれる群像劇もまた、頻繁に見ることができるだろう。


 このように、二十歳前後の男子が恋や日常のなんでもない出来事によって成長する群像劇というのは、昨今はあまり見られなくなった気がするが、韓国にはまだ存在すると思われたのが、2PMのジュノ、「相続者たち」『チング 永遠の絆』のキム・ウビン、ドラマ『ミセン -未生-』でブレイクしたカン・ハヌルが主演の『二十歳』だ。


 監督は、日本でも評価の高かった『サニー 永遠の仲間たち』のイ・ビョンホンが手掛ける。『サニー』では、女性たちの友情を生き生きと描いたが、『二十歳』では、男子学生たちの恋と悩みと友情を生き生きと切り取っている。


 三人の主人公たちには、それぞれに苦悩がある。ジュノ演じるドンウは、高校時代に父が事業に失敗し、バイトに明け暮れながら漫画家を目指す。キム・ウビン演じるチホは、駆け出しの新人女優ウネに翻弄される。名門大学に進学したギョンジェは美しき先輩に惹かれる。三人は、映画の中で何者かになるわけではないが、とにかく、ソウルに暮らす二十歳の日常が描かれ、そしてちょっぴり大人になっていく。


 映画の中でギョンジェは、ある女性を慰め、世の中には悪い男と付き合う女がいて、そして、そんな女を慰めるしかない情けない男(それは自分だ)が存在することを知る。


 日本の作品のわかりやすい例として『花より男子』でいえば、ドSキャラの元祖ともいえる道明寺司は「悪い男」で、癒し系王子の元祖ともいえる花沢類は「慰めるしかない男」である。そして、そんな「悪い男」と「慰めるしかない男」で、多くの日本の青春ラブ・コメディはできている。しかし、それはヒロインの目線で描かれることがほとんどであるから、「慰めるしかない男」(「悪い男」も同様に)の情けなさ、かっこ悪さが語られることはない。


 それはなぜか。昨今のラブコメディの観客は女子で、女子の妄想に忠実なものが人気であるからだとか、そもそも少女漫画原作が多いために、ヒロインの心情のほうが描かれているということもあるかもしれない。また、男子が女子を獲得するために右往左往すること(を恋ということかもしれない)がさほど求められておらず、そんな作品が少ないために、男子の心情の吐露が見られないのかもしれない。


 ヒロイン目線のラブ・コメディも楽しいが、そんな作品しか見られないのも残念だ。男子が恋に対する感情を「このせつなさや情けなさは何なのか」と自問したっていいはずだ。『二十歳』の三人の男性主人公は、情けなさを自覚しているから、かっこ悪いところもあるけど、なぜかそんなかっこ悪さが心に残る。


 今、青春映画に欠かせない若手イケメン俳優たちが主体の、かっこ悪さも焦燥感も描いた等身大のラブ・コメディというものが日本でも存在したら、意外と女性たちの関心を引くかもしれないのにと、この『二十歳』を見ていると思われるのだった。(西森路代)