ホンダが正社員の定年を60歳から65歳に延長する方針を明らかにしたと、12月1日付の日本経済新聞などが報じている。2016年度中の導入を予定している。自動車大手では初で、人材確保に苦心する他の大手企業にも広がりそうだ。
現制度では60歳以上で再雇用される場合、1年契約で給与が定年直前の半分ほどに落ち込んでいた。しかし今回の定年延長に伴い、給与は8割程度まで改善する。上昇分の労務費は、手当の見直しなどでまかなうという。
「若手世代にしわ寄せ? そのようなことはしません」
このニュースに対しては、ネットで「大変素晴らしい英断だ」「他の企業も続いて欲しい」と取り組みを歓迎する声があがる一方、「これは実質シニア層優遇ってことになるのか?」という懸念も見られた。
他の大手企業の中には、生涯賃金を維持するために、若手世代の昇給カーブを鈍化させて、定年延長分の労務費をまかなうところもあったからだ。しかしホンダの広報部に電話取材をしたところ、次のような回答があった。
「若手世代へのしわ寄せのようなことはありません。そもそも今回の改定は単に定年を延長するだけではなく、多様な従業員が活躍できる環境の整備と、総合的な労働条件の見直しを図ったものです」
時間外労働の割増率を業界相場に合わせ、3000円を支給していた国内出張の日当も国際標準に合わせて廃止に踏み切ったという。
評価体制も、より能力を重視するものに変わるということだ。今までも年功序列型ではなかったというが、パフォーマンスを上げるとすぐに給料に反映される仕組みに変更。「能力はあるのに上が詰まっているせいで賃金が上がらない」といったことはなさそうだ。
子ども・介護対象者1人当たり2万円を支給
あわせて今回大きく変更されたのが、育児や介護への支援策だ。専業主婦への手当をなくし、子ども手当を拡充させる。これまでは扶養家族1人目の手当が1万6000円、2人目は4800円を支給しており、専業主婦と子ども2人で2万5600円となる。
これを子ども1人当たり2万円に変更することで、前述の家族構成では支給額は4万円になり、1万4400円のアップとなる。
「子育て世代では収入が増え、助かるようになっています」(広報担当)
介護の支援も厚くし、介護対象者1人当たり2万円の手当を支給する。ということで今回の改定は、働き方や家族像の変化に対応した「再配分」であり、「多様なニーズに合わせて今の時代にあった制度にする」のが今回のねらいということだ。
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