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新宿区「客引き」防止条例に「罰則」新設へ ・・・被害を止める効果はあるのか?

2015年12月01日 11:11  弁護士ドットコム

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日本有数の歓楽街・歌舞伎町をかかえる新宿区では、悪質な客引きの根絶に向けて、客引き行為の防止条例を改正し、罰則を新設する方針を決めた。改正条例は区議会を経て、来年4月の施行を目指すという。


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現在の条例は、路上での声かけなどの客引き行為を禁止しているが、違反しても、区長から「指導」されるだけだった。報道によると、改正案では、警告や勧告に従わず客引きを続ける店に対して、店舗名を公表し、5万円以下の「過料」を命じるという。



新宿駅周辺の繁華街では、客引きに連れられて行った店で多額の料金を請求される「ぼったくり」の被害が多発している。新宿署に通報があった被害件数は、昨年9月からの1年間で2044件にのぼったそうだ。



客引きに対する罰則について、ネット上では「店舗名公表されたら、別のところに別の名前で出すだけ」「結局はよその都内に流れる」など、いたちごっこになることを懸念する声が多数上がっていた。罰則を設けることで、悪質な客引きを根絶できるのだろうか。歌舞伎町でぼったくり問題に取り組む古川穣史弁護士に聞いた。



●条例改正で「悪質な客引き」を根絶できる?


「まず、客引きと一口にいっても、いろんな種類があります。キャバクラや風俗の客引きから、居酒屋やカラオケまで多種多様です。



今回の改正は、ぼったくりをおこなうキャバクラの客引きや、不当に高い金額を請求する居酒屋の客引きなどを根絶しようというものだと思います。これらは社会問題にもなり、話題を集めました」



古川弁護士はこのように述べる。今回の改正で、悪質な客引きを根絶できるのか?



「これまでの条例の実施状況を歌舞伎町でみていると、地元商店街と警察などが連携し、客引きをしないように、と声かけによる指導を行っていることが多かったと思います。



今回の条例改正では、罰則が追加されるようですが、悪質な客引きを根絶することには直結しないでしょう。あくまで区条例の改正にすぎませんから、罰則としては過料にとどまり、抑止力は弱いと思います」



●悪質な客引きは「フリーランス」の場合が多い


では、「店名の公表」についてはどうだろう。



「いわゆるキャバクラなどの悪質な客引きは、特定の店舗に所属していない『フリーランス』が多くいます。表向きは、飲食店に雇われていないため、悪質な客引き行為をしたのがフリーだった場合、店名は公表されないことになります。



実際には、フリーを装っているだけで、飲食店に雇われた客引きも数多くいるのが現実ですが、立証するのはなかなか難しいでしょう。そのため、飲食店の店名を公表する罰則を加えても、そもそも店と客引きの雇用関係を立証することができないため、公表に踏み切れず、抑止力にはなりにくいと想定されます。



また、悪質な店舗はまた店名を変えて営業するでしょうし、新宿から場所をうつします。罰則を科すことで一時的には効果があっても、抜本的な解決にはつながらないでしょう。



さらに、条例改正によって、大手チェーンなど、コンプライアンスを重視している店舗の客引きや客待ちなどがいなくなってしまい、お店を探している人にとっては不便になる可能性が高いという弊害も予想されます。



ただ、本当に人気のあるお店は客引きがいなくても営業できています。今後、区条例が改正されても、消費者はこのことを理解して、客引きに対して注意深く行動しないといけないことに変わりはないでしょう」



●「歌舞伎町のキャバクラのぼったくり、最近は沈静化」


最後に古川弁護士は、歌舞伎町における最近のぼったくり事情について話した。



「社会問題になった歌舞伎町のキャバクラのぼったくり店は、警察が、いわゆる『ぼったくり条例』の適用を強化したこともあって、だいぶ沈静化しました。歌舞伎町のぼっくたり店の関係者たちは池袋や新橋などへ移動しているようですが、そこまで派手なぼったくりはおこなっていないとも聞いています。



歌舞伎町には確かに悪質な客引きが多いですが、100%ぼったくりといえるかは難しいですね。ただ、客引きの収入は、彼らが連れて行ったお客が店で使った金額によって決まる部分も多いです。したがって、ぼったくり店舗に客を連れて行ったほうが収入が増えるため、結果としてぼったくりに加担していた客引きが多かったと思われます」



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
古川 穣史(ふるかわ・じょうじ)弁護士
夜11時に電話で相談してきた依頼者を助けるために歌舞伎町に赴いて以来、ぼったくりの案件を数多く手掛ける。東京都を中心にDV、ストーカーや刑事事件の被害者側などの案件を積極的に行う。会計事務所の法律顧問として一般民事事件、企業法務なども扱っている。

事務所名:八木良和法律事務所