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姫乃たま&ベルハー宇佐美萌が語る地下アイドルの裏側 「嫌いになる前に辞めなきゃと思った」

2015年11月30日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

姫乃たま(左)とBELLRING少女ハートの宇佐美萌。

 地下アイドル・ライターの姫乃たまによる初の単著『潜行』の発売を記念したライブ&トークイベントが、11月20日にdues新宿で開催された。


 同イベントは、ディスクユニオンが運営する書店・ブックユニオンによるライブ・トークイベントシリーズ『ブクドル・ユニオン』の第3回。ディレクターを務めるアイドル専門ライターの岡島紳士氏が、アイドルや音楽、本と関連した企画を展開していくもので、第一回はマンガ『ミリオンドール』、第二回はショートカット推進委員会写真集『0410』を題材にトークを展開した。今回は『潜行』の著者である姫乃たまと、BELLRING少女ハートのメンバーで、2月に卒業を予定している“もえち”こと宇佐美萌が登壇。ここではトークの一部を抜粋しつつ、イベントの模様を紹介したい。


 まずは宇佐美が同著について、「想像の中だけだと思っていたことが現実にも起こっているんだとわかった。パンストを売るアイドルについての話が衝撃的で。ちなみに、私のパンストを3万で買う人?」と冒頭から衝撃的な発言をしたかと思えば、続けて「私たち、汗つきタオルを5千円で売ったことがあります」「特典会とかで貼ってた湿布をあげたりしてたんですけど、売ればよかった」と明かし、会場を大きく盛り上げた。


 姫乃はそんな宇佐美に対し「『アイドルは3年目でやめちゃう説』というのがあるのですが(宇佐美も該当)。もえちさんもやってみて『思ってたことと違う』と感じましたか?」と質問。宇佐美は「本の中でもその言及がされていてギクッとしました。交通費は出ていたので感謝していますし、チェキのバック(特典会のチェキ枚数に応じてそれぞれのメンバーに収入がある仕組み)をいただいていたので、ファンの方にもお礼を言いたいです」と返答した。姫乃は「ライターとして原稿料をもらえるようになるまではファンの方からの収入だけに支えてもらっていて、3年目で精神科に通うようになった」と語ると、宇佐美は「ベルハーは田中さん(田中紘治。グループの楽曲制作・MVを手掛けるディレクター)に当たれるので、病んでる子がいない」と返し、姫乃は「運営が仕事している。ファンに叩かれる運営さんは大事」と、アイドル目線から運営の大事さを語った。


 イベント中盤、姫乃は同著出版後の反響について「父親と弟がともにインディーズのバンドマンで、特に父親とは時々ファン被りするのですが、本にこっそり書いたら吉田豪さんがツイートしていて、掟ポルシェさんまで反応してくれていました」とアーティスト一家ならではのエピソードを告白。続けて『潜行』で書かれていたことについては「ラジオ・テレビからは沢山連絡がきてインタビューを受けたけど、闇の部分に言及するものが多かった。地下アイドルの魅力って過激なところに見出されがちですが、それ以外のところをもっと伝えたいですね」と、これからの課題について話した。


 その後、話題は再び宇佐美の卒業に戻り、姫乃は「アイドルは、メジャーな人ほど、事務所との契約があったりするので、すぐには辞めれない」と述べるが、宇佐美は「わたし、契約してないんですよね」と暴露。続けて卒業の理由について「田中さんに『これ以上ベルハーにいると普通の世界に戻れなくなる』と就職を勧められたから」だと説明すると、姫乃は「就職も大事だけど、アイドルは今やめてしまうともうできない。どうやって踏み切ったのか」と尋ね、宇佐美は「今もやりたい気持ちが9割だけど、嫌いになる前に辞めなきゃとも思った」と正直な気持ちを明かした。また、“承認欲求”についての話では、宇佐美が「わたしのソロパートを使っていかに目立つか、みたいなことを考えていると思う」と語り、宇佐美のファンを中心とした笑い声が客席から起こった。


 トーク終盤、岡島が姫乃に対し「活動としては色々なことをしていますが、この一冊を書いたことで、姫乃さんは地下アイドルを背負うことになる。これからどうしていくのでしょう?」と質問。これに対し、姫乃は「就職せずに地下アイドル一本に絞ったら、今のところ生活できているので、みんなが許す限りはこのままでいようと思います」と今後の活動について語った。また、最後に姫乃は「私自身と私の書いていることだけが、地下アイドルの全てではないことを強調していきたい」と語ると、宇佐美は「どうやったら本を書けますか? 私も書きたいと思った」と、自身にも執筆願望が生まれたことを告白し、トークは終了した。


 姫乃はその後のライブで、ユルいダンスと艶のある歌声を武器に、カントリー調の「健康な花嫁」、年上男性への恋心を歌った「42歳」、町あかりが提供した「たまちゃん!ハ~イ」のほか、長く歌い続けている楽曲「ねえ、王子」、最新作『僕とジョルジュ』のリードトラックである「恋のすゝめ」を披露。書き手・アーティストとしての両側面を見せつけるイベントは、盛況のなか幕を閉じた。


(取材・文=中村拓海)