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武藤彩未が渋公ライブで示した、“アメリカン・ロック志向”の完成形 ライブCDで感動の夜を振り返る

2015年11月28日 14:11  リアルサウンド

リアルサウンド

武藤彩未

 ひとつひとつのステージにおいて、武藤彩未はその瞬間の完成形を提示してきた。武藤彩未の19歳の誕生日である2015年4月29日に開催されたライブ『Special Live「BIRTH」』を収録しているのが『Re:BIRTH~19th Birthday Live at渋谷公会堂』だ。タワーレコード・HMV限定盤はCD2枚組、アスマート限定盤は2CD+DVDだ。


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 4月29日のライブが遠い昔のことのように感じられるのだが、それには理由がある。6月9、10日にカヴァーを多数披露した『武藤彩未「A.Y.M. ROCKS」』を渋谷CLUB QUATTROで開催し、7月には『武藤彩未ライブハウスツアー2015「TRAVELING ALONE」』をスタートさせ、8月1、2日には『TOKYO IDOL FESTIVAL 2015』に出演、10月4日にはホールコンサート『A.Y.M. Ballads』を開催するなど、約半年の間に武藤彩未が多彩な形式でライブをしてきたからだ。渋谷公会堂がほんの約半年前のことなのか……と愕然とさせられるほどの密度だ。


 4月29日のバンドは、キーボードのnishi-ken、ドラムの楠瀬タクヤに加え、新たにギターの山本陽介、ベースの須長和広を迎えた編成だった。そして、渋谷公会堂のチケットはソールドアウト。


 このライブは私も会場で見ていたが、この日の武藤彩未が示した完成形とは、“アメリカン・ロック志向の武藤彩未の完成形”だった。山本陽介のギターの存在感がかなり大きく、彼を含むバンドの演奏と武藤彩未のボーカルの拮抗が大きな聴きどころだった。


 CDの冒頭には、武藤彩未のライブではおなじみの“ナウシカREMIX”も収録されており、そこから「Are You Ready 2015」へ。「Are You Ready 2015」は武藤彩未自身が作詞し、「渋公」という単語も歌詞に登場するスペシャルな楽曲だ。そして、バンドの演奏の個性が強かった日だからこそ、原曲に近い演奏による「Seventeen」のカタルシスも強烈だ。また、「風のしっぽ」や「とうめいしょうじょ」のようなバラードでの武藤彩未の繊細な歌唱も光る。この日は「永遠と瞬間」もバラードにアレンジされていた。後半の「RUN RUN RUN」以降は一気に盛りあがり、ファンの歓声が大きな音量でCDに収録されているのも素晴らしい。ファンの大合唱が起きる「彩りの夏」は、客電が点いても収まらない歓声に応えた2回目のアンコールで歌われた楽曲だ。ファンの大合唱をそのまま収録した、感動的なライブ音源である。


 アスマート限定盤のDVDは、「宙」「Daydreamin'」「永遠と瞬間」「パラレルワールド」「交信曲第1番変ロ長調」「OWARI WA HAJIMARI」のライブ映像を収録。「百聞は一見にしかず」と言うが、これを見れば当日の舞台装置の豪華さが把握できる。ステージに吊るされた大小の球体、ステージ上に置かれた幾台もの照明、放たれるレーザー……。球体には映像も投射されていく。照明による演出も圧巻だが、真に驚くべきは、小柄な武藤彩未が、そうした演出に負けない存在感を放っていることだ。大器の証しである。彼女のダンスも見られるので、アスマート限定盤を推奨したい。


 12月23日には『武藤彩未 X’mas Special LIVE「A.Y.M.X.」』が、赤坂BLITZで開催される(12月5日12時より、チケットの一般販売がスタート)。「武藤彩未」を更新していくことに誰よりもストイックに挑んでいるのは、間違いなく武藤彩未自身だ。彼女がいかにして「武藤彩未」を更新していくのか、その日を楽しみにしたい。(宗像明将)