トップへ

『紅白歌合戦』は日本カルチャーの見取り図に? BUMP、ゲス乙女、μ’s、星野源、乃木坂46ら初出場組中心に検証

2015年11月27日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ゲスの極み乙女。『オトナチック/無垢な季節(初回限定盤)』

 第66回『NHK紅白歌合戦』の出演者が11月26日に発表された。


 今回の紅白は、近藤真彦や今井美樹、X JAPANの復帰組も目立つなか、初出場アーティストとして大原櫻子、Superfly、乃木坂46、μ’s、レベッカ、ゲスの極み乙女。、BUMP OF CHICKEN、星野源、山内惠介、三山ひろしの計10組が発表された。


 今回のラインアップから、紅白歌合戦の現在をどう読み解くことができるのだろうか。音楽ジャーナリストの柴那典氏はこう解説する。


「各局で大型音楽番組が増えていくなかで、その元祖ともいえる『紅白歌合戦』は今回、『ザッツ、日本! ザッツ、紅白!』というテーマを打ち出し、演歌・アイドル・アニソン・J-POP・ロックと各ジャンルを網羅した“日本のポップカルチャーの見取り図”といえるラインアップになっています。今回の発表にあたって、それぞれのメディアで見出しとなっているアーティストが異なることも、その象徴といえるでしょう」


 また、今回初出場組の目玉ともいえるBUMP OF CHICKENや、ゲスの極み乙女。、星野源といったロックファンにも馴染み深いアーティストについて、同氏はこう続けた。


「BUMP OF CHICKENに関しては、NHKが長年出してきたオファーがようやく実った形ですよね。彼らもベスト盤とアルバム『RAY』のリリース以降は、初音ミクとコラボや『ミュージックステーション』への出演など、外とのかかわりを増やしてきました。このタイミングでの出演は、バンド・ファン・番組のいずれにとっても喜ばしいことでしょう。また、ゲスの極み乙女。や星野源といった“ロックフェスのステージに立つアーティスト”がここまで多く出演するのも、時代の流れを感じます」


 続けて柴氏は、各カテゴリにおけるラインナップに“新陳代謝”が起こっているところが多いことを提唱した。


「ジャニーズ勢は近藤真彦の復帰で史上最多の7組とされていますが、近藤を“特別枠”と考えると不動といえますし、同じくLDH勢も3組と昨年のままです。時代の変化を感じるのはμ’sが初出演を果たしたアニソン勢、山内惠介が初出場を果たした演歌勢です。これらは枠として出演者が減っておらず、ジャンル内で若手が台頭していることをNHK側も理解してのブッキングと読めます」


 また、同番組における中年層を狙った“復帰枠”についてはこう述べる。


「昨年の出演陣の中では薬師丸ひろ子と中森明菜が復帰枠にあたりますが、今回は今井美樹とX JAPAN、レベッカがラインナップされています。これは『あまちゃん』から始まった80年代アイドルのリバイバルがひと段落し、80年代後半から90年代初頭のバンドやシンガーソングライターの復活が脚光を浴びている時代の流れを象徴しているといえるでしょう。また、数年ぶりの復帰となる小林幸子は、ニコニコ動画を通じてこれまでと違うファン層を開拓した結果、かつての演歌カテゴリではなくネットに親和性の高い特別企画として出演することが決まっており、こちらの異端さもまた面白いところですね」


 最後に、アイドル・J-POP枠の変動と、番組の進化について同氏はこう締めた。


「ももいろクローバーZときゃりーぱみゅぱみゅは、ともに2010年代の日本のポップカルチャーを牽引してきた存在だったので、両者が出演しなくなったことには驚きました。一方、乃木坂46が初出場を果たしたこともあり、女性アイドルに関しては方向性の変動が見られる印象です。いきものがかりやゆずなどJ-POPシーンの人気者は盤石の印象で、初出演のSuperflyは実力ある歌声を、大原櫻子はフレッシュな存在感を見せてくれると思います。総じて言えるのは、SNSの普及以降のここ数年、紅白歌合戦はそのあり方をかなり変えてきている、ということ。歌だけでなく企画や演出で話題を作り、若者層から中高年層まで幅広く引き付ける番組作りをしている。各世代のポピュラー音楽の需要のされ方を的確に分類したうえで、それぞれのカテゴリにまんべんなく話題性を提供する番組へと進化していることが伺えますね」


 大型音楽番組が各局で立ち上がるなか、『紅白歌合戦』は日本カルチャーの見取り図としてその色を濃く打ち出すことができるのか。当日の放送を心待ちにしたい。(リアルサウンド編集部)