2015年11月27日 06:51 弁護士ドットコム
(この質問は、「Yomiuri Online」の人気企画「発言小町」に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部が再構成したものです)
悔しいことですが、元夫から養育費が振り込まれなくなることは、珍しくないようです。でも、請求することは当然の権利です。今回、寄せられたのは「10数年たった今でも請求できるのか?」というケースでした。
トピ主は「アラフォーのシングルマザーで、大学1年の息子がいます。息子が1歳の時に夫の不貞が原因で離婚し、元夫はその相手と再婚して子供もいます」といいます。
「離婚時、元夫からもらう養育費は月3万円と決めて証書も作りましたが、その後、元夫に『支払いが厳しい』と訴えられ、話し合いで1万5千円に減額しました。ところが、それから何年もたたずに、夫からの支払いがなくなったのです」
その後は、元夫に対し特に養育費を請求することもなく、実親の援助を得ながら育ててきたというトピ主。しかし、現在の年収はやっと300万円。年金暮らしの実親と、100歳を超えて現在入院中の祖母、年間150万円に及ぶ息子の学費のやりくりが大変になってきたそうです。
そこで「もう十数年も連絡を取っていない元夫に学費の援助を頼めないかという考えが出てきてしまいました。今さら月5万円ほどの養育費を元夫に頼めるものでしょうか?」と考えています。
レスには「ただ、義務を果たさない元夫が、今更払うでしょうか?それよりも元夫が今後、息子さんに扶養を言ってきませんか?関わり合わない方が良いように思います。」「養育費をきちんと払った形になれば将来の面倒を看ろと言ってくるでしょう。」などと、関わりをもつことへのデメリットも指摘されました。
離婚問題に詳しい高橋 善由記弁護士に聞きました。
(※この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部が再構成したものです。トピ「今更養育費の再開って?」はこちら http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2015/0920/731177.htm)
A. 請求はできる、しかし「時効」が問題
原則として、養育費の過去の未払い分を請求することはできます。しかし、「時効」があるため注意が必要です。
トピ主さんの場合、元夫との話し合いによって、月々の養育費の額を決めていたとのことです。この場合、月々の養育費の請求権は5年で消滅時効にかかると考えられます。
そのため、未払いの養育費について、元夫に請求をすること自体はできます。
しかし、元夫が「時効の援用」、つまり時効の利益を受ける意思を示しますと、原則として遡って5年分のみを請求できるにとどまります。
未払い期間における養育費の金額については、これまで、養育費の金額を変更する協議等をしていないようです。最後に話し合いで取り決めた1万5000円になると考えられます。
ただ、この間のお互いの収入や生活状況等の変化があり、増額する必要があるのでしたら、元夫との協議や調停において、その点を主張し、増額してもらえるように交渉していただくことになります。
今後(大学卒業までなど)の養育費についてですが、従前、大学卒業までの養育費について取り決めをしていれば、その時期までの請求ができます。
もし養育費の支払期間について取り決めをしていなければ、元夫との間で、協議や調停を行い、その中で、今後の養育費の支払いを求めていくことになります。
その際は、お互いの現在の収入や生活状況等を踏まえて、今後の養育費について取り決めをすることになりますが、これまで養育費が支払われていなかった事情を考慮して、養育費を増額してもらえるように交渉をする必要があります。
【取材協力弁護士】
高橋 善由記(たかはし・よしゆき)弁護士
1972年宮城県仙台市生まれ。2002年弁護士登録(仙台弁護士会)。地元仙台で、離婚問題、交通事故等で困っている方々のサポートに力を入れており、月に30件以上の相談を受けている。
事務所名:高橋善由記法律事務所
事務所URL:http://www.sendai-rikon.net/