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大卒者を即戦力に鍛える「就職予備校」が中国で人気 製造業に興味なし「やっぱりネットが最先端」

2015年11月26日 15:40  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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いま中国では、大学卒業後にIT技術の専門学校に通い、スキルを身につけてから就職先を探す動きがある。11月19日放送の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、製造業に将来性はないと見て「インターネット関連企業に就職したい」と語る学生を密着取材していた。

中国・北京郊外の雑居ビルに、大学卒業生対象の就職予備校「千鋒教育 北京校」がある。教室にはパソコンを前にした何十人もの学生が隙間なく並び、スマートフォンアプリの実践的な開発ノウハウを学んでいる。学校の責任者は、学生の就職実績をこう誇る。

「4か月の訓練を終えた後には、有名な企業に就職できます」

アリババに入れれば「初任給20万円」

日本より人件費が低いイメージの中国だが、アリババなどの人気企業に就職すると初任給が20万円を超えることも珍しくない。中国の大卒者の平均月給は大企業でも9万5000円ほどなので、倍以上の収入となる。

今年の夏、北京の大学を卒業した鄧(トウ)さんは、希望の就職先に入るためにここで学んでいる。大学ではコンピュータを専攻したが、アプリ制作は勝手が違って悪戦苦闘している。

「北京千鋒」では集団で学びながらも、不明な点は講師のマンツーマン指導もある。一日中みっちり学び、学校を出たのは夜9時。トウさんは一緒に学ぶ仲間4人と学校近くの合宿所のような施設で共同生活を送る。みな製造業には興味がなく、口を揃えてこう話す。

「やっぱり今はインターネットが最先端だよ。(アプリ技術者は)月給で23万円ぐらいはもらえる」

学生の強い希望の背景には、中国政府が行う産業構造の大胆な転換がある。競争力のない製造業に替わり、新たにIT産業の育成を急速に促進しているのだ。

「知識集約産業へ」国をあげて転換図る

単純労働による工場では立ち行かなくなっている中国の姿は、トウさんの帰省でも垣間見えた。彼の実家は北京から約150キロ離れた河北省の農村地帯で、印刷資材の製造会社を経営している。

門構えは村の中でもひときわ立派だが、父親は工場を息子に継がせる気はない。2年前から経営が厳しくなっており、仕事は最盛期の3分の1に減っているのだ。我が子が作ったスマホアプリを嬉しそうに見つめた後、こうつぶやいた。

「ここには発展する未来はない。だから外に目を向けて欲しい」

トウさんは、なかなか就職が決まらないと頭を抱えた時期もあったが、先月末、念願のソフト会社への就職が決まったと連絡があった。「製造業から知識集約産業へ」と経済の形が大きく変貌しようとするなか、中国の学生たちは敏感かつ迅速に対応していた。

「会社が人を育てるべき」でいいのか

社会人教育の場として大学が機能していないのは、中国も日本も同じかもしれない。しかし「学生は頭カラッポにして入社し、会社が人を育てるべき」「学生は素直に会社に染まるべき」という日本に対し、中国は自力で「即戦力」を身につけて就活に臨んでおり、たくましさを感じる。

日本でも今後、同じような「就職予備校」が発達するだろうか。「新卒一括採用」で選考時期まで画一的に規制している限り、卒業後にスキルを身につける余裕もないだろう。社会で活躍できるスキルを持った人材の輩出に教育機関に関与しなければ、中国との競争に勝てないのではないだろうか。(ライター:okei)

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