2015年11月25日 19:21 弁護士ドットコム
国政選挙の「一票の格差」を問題視する2つの弁護士グループが、最大2.13倍の格差があった昨年12月の衆院選は「憲法違反で無効」と訴えた17件の裁判について、最高裁の判断が示された。最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は11月25日、上告審判決のなかで、衆院選が「違憲状態」だったと判断したが、原告が求めた「選挙無効」は認めなかった。衆院選の一票の格差を「違憲状態」とする判決は、2009年、2012年の判決に続き、これで3回連続だ。
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昨年12月14日に行われた衆院選は、小選挙区の有権者数が最も多い東京1区と、最も少ない宮城5区で、「一票の格差」が最大となり、2.13倍の格差があった。弁護士グループは、昨年の衆院選が行われた後すぐに、全国295の小選挙区の選挙が憲法が定めた「法の下の平等」に反し違憲無効だとして、17件の裁判を起こしていた。
判決後、両グループの弁護士たちは、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた。
山口邦明弁護士は、今回の判決について「ありきたりの判決で、がっかりした」と率直な感想を述べた後、「違憲状態判決を何回も繰り返して、裁判所は、どういう方法で(選挙の格差を)正そうと考えているのか。国会の怠慢を是認しているだけだ」と断じた。
その上で、「結局最高裁は、選挙を無効にすると世の中が混乱すると考えて、選挙を無効にする判決は出せないのかもしれない。それができないのなら、裁判所はせめて、格差が是正されるまで、選挙を事前に差し止めることを認めてほしい」と訴えた。
山口弁護士のグループは、今回問題となった衆院選について、投開票前に差し止めを求めて東京地裁に提訴したが認められなかった。
もう一方の升永英俊弁護士のグループからも、最高裁の判決について厳しい声が上がった。
升永弁護士は、こうした「一票の格差」がなくならないのは、国会よりも裁判所の責任が大きいと指摘した。
「憲法98条には、憲法に反する法令、国の行為は無効だと書いてある。違憲だと判断したのなら、選挙を無効にすべきだ。違憲状態といったよくわからない言葉を使って、憲法のルール通りの判決をしない最高裁の責任は重い。私は、日本は三権分立の国ではなくなってしまったと思う」と述べた。
また、伊藤真弁護士は、裁判の中で国側が「人口の少ない地方の民意を反映するために、ある程度の投票格差は許容されるべき」と主張したことを、次のように厳しく批判した。
「憲法は、どの選挙区から選ばれようと、国会議員は全国民の代表だということを定めている。少数意見を反映させるために格差が許されるという考えは間違っている。障害を持つ人や、性的マイノリティーなど、世の中にはいろいろなタイプの少数者がいる。地域的な少数者だけを優遇するという考え方はおかしい」
一方で、今回の裁判の意味は小さくないことを伊藤弁護士は指摘した。
「安保法制の成立をめぐる議論などによって、国民の意思をいかに政治に反映させるかが、国民の中でも問題として意識されるようになってきた。立憲主義という言葉が国民に少しずつ広がり始めている。そうした重大な局面における判決だ。自分の投票が1票ではなく、0.4票、0.5票の価値しかないことの意味を、国民は今回の判決をきっかけに真剣に考えてほしい」
(弁護士ドットコムニュース)