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軽減税率の対象品目「線引き」が難航・・・税理士「軽減税率そのものをやめるべき」

2015年11月23日 09:51  弁護士ドットコム

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消費税率を10%に引き上げる際に、税率を低く抑える「軽減税率」の対象品目をめぐって、自民・公明両党の与党協議が難航している。


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報道によると、自民党はこれまで、対象品目を明確に線引きできる「生鮮食品」に限定すべきだと主張している。一方で、公明党は「低所得者ほど、弁当や総菜などの加工食品を消費する傾向にある」として、「加工食品」を含めた幅広い品目について、税率軽減の対象とするよう求めているという。



軽減税率の対象品目をめぐっては、加工食品を含めるか否かのほか、外食をどう扱うのかといった問題があり、「線引き」が非常に難しい。はたして、軽減税率の線引きをどう考えるべきか。李顕史税理士に聞いた。



●すでに「軽減税率」と似た制度がある?


「まず、現在でも、軽減税率と似たような制度があります」



李税理士はこう切り出した。どういう制度なのだろうか。



「たとえば、土地の売買には消費税がかかりません。調剤薬局で処方される薬の購入も非課税です。また、医療費は非課税ですが、美容整形など保険のきかない自由診療は消費税が課税されています。



そもそも消費税とは、消費に負担を求める税です。したがって、その性格上、課税の対象としてなじまないものや、社会政策の配慮から課税しないものがあるのです。



また、消費税の導入前にも、一部のぜいたく品には、税金がかけられていました。現在は廃止になった『物品税』という税金で、たとえばダイヤモンドには15%の税金がかけられていたのです。一方で、金地金は、物品税がかかりませんでした。



このように、過去にも消費税に似た間接税がありました。ややこしいのは確かですが、過去にあまり混乱が起きていないように思います」



●「軽減税率の導入そのものをやめるべき」


現在議論されている軽減税率についてはどうだろうか。



「定義が曖昧だと、混乱が起きると予想されます。たとえば、外食は課税して、生鮮食品は課税しないルールになったと仮定しましょう。



そのような場合、牛丼チェーン店の400円の牛丼には課税されて、100グラム1万円の高級牛肉には課税されないことになります。常識で考えて、おかしい気がします。100グラム1万円の高級牛肉を買えるのは富裕層に限られます。富裕層が消費税で優遇される不公平感を払拭するのは難しいでしょう。



また、お菓子類に軽減税率を適用するかどうかも議論されていると聞きます。しかし、たとえばバナナは生鮮食品ですが、チョコバナナはどうなるのか・・・考えるとキリがありません。



こういう理由から、私は軽減税率の導入そのものをやめるべきだと思います」



最後に、海外では軽減税率は導入されているのだろうか。



「たとえばカナダでは、ドーナツを買うとき、5個以下は外食とみなされ、消費税が課税されます。しかし、6個以上買うとテイクアウトとみなされ、課税されません。



このような制度で、カナダで混乱が生じたかどうかまではわかりませんが、ややこしいのは確かです」



李税理士はこのように述べていた。



【取材協力税理士】


李 顕史(り・けんじ)税理士


李総合会計事務所所長。一橋大学商学部卒。公認会計士東京会研修委員会副委員長。あらた監査法人金融部勤務等を経て、困っている経営者の役に直接立ちたいとの想いから2010年に独立。金融部出身経歴を活かし、銀行等にもアドバイスを行っている。


事務所名 :李総合会計事務所


事務所URL:http://lee-kaikei.jp/


(税理士ドットコムトピックス)