イギリスのエンジンメーカー、イルモアが、2017年からF1への導入計画が進められているクライアントエンジンの独占供給メーカーに名乗りを上げたようだ。一方でコスワースは申請しない方針を固めたという。
レーシングエンジンのスペシャリストとして知られるマリオ・イリエン率いるイルモアは、現在アメリカのインディカー・シリーズにシボレーブランドで供給しているエンジンをベースに、F1への導入計画が進んでいるクライアントエンジンの有力な候補と考えられていた。
FIAは、クライアントエンジンの入札表明を11月23日までに示さなければならないとしていたが、イリエンは20日、「イルモアは申請した」と、ドイツ紙のアウト・モーター・ウント・シュポルトに語ったと、grandprix.comが伝えている。
イルモアは現在、シボレーブランドで2.2リッターV6ツインターボエンジンをインディカーに供給しているが、同紙はWEC(世界耐久選手権)のLMP1エンジンを開発しているAERと、F1での実績が長いコスワースも入札に加わる見込みだと報じている。
AERのエンジニアリングマネージャー、アンドリュー・サンダースは元イルモアのエンジニアで、2001年から07年までマクラーレンと密接に働いた経験がある。
「AERはFIAの提案に非常に興味を持っている」と、創設者のマイク・ランカスターは語っている。
しかし一方では、イルモアと並ぶ有力候補のコスワースが、今回のクライアントエンジン構想に加わらないことを決断したと、motorsport.comは伝えている。
彼らはイルモアやAERのように、ハイブリッド非搭載の2.2リッターV6ツインターボエンジンの開発に適したベースエンジンを有していない。そのため、ゼロからスタートするには時間とコスト面の両面から難しいと判断したという。
「我々は、ゼロからエンジン開発を行うための財政状況を調査しなければならなかったが、それは全く成功が見込めなかった」と、コースワースの共同オーナーであるケビン・カルコーベンは語っている。
「ゼロからの開発には全部でおよそ2000万ポンド(約37億円)かかる」
「生産にも、すでにデザインがない限りはあまりに時間が短すぎる」
またカルコーベンは、現行のV6パワーユニットと同等のエンジンを作ることも難しいと考えている。
「彼ら(FIA)がどうやって2種類のエンジン性能のバランスを保とうとしているのか、まったく不可解だ」